【厚生労働省】予想外の事務次官留任 今後の人事に影響か?

厚生労働省の幹部人事が、公表された。年金制度改革法を巡る通常国会の審議が会期終盤まで続いたことや、医療関係の改革が今後控えている関係で首相官邸サイドとの調整が長引き、他府省より1週間公表が遅れた。注目は伊原和人事務次官の留任だ。意気軒高なアイデアマンとして知られる伊原氏だが、勇退説も強かった。予想外の人事は今後の次官レースにも影響を及ぼしそうだ。

「あんな大問題が起きて伊原さんが留任するとは思わなかった」。同省中堅幹部はこのように感想を漏らす。大問題とは、今年度予算の国会審議で、高額療養費制度の負担上限引き上げ案が、野党や患者団体の反発で凍結に追い込まれたことに他ならない。

 患者団体からヒアリングを実施しないなど、丁寧さを欠いた対応が石破政権を窮地に追い込んだことは記憶に新しい。春ごろには伊原氏の勇退説が流れたものの、官房幹部は「官邸サイドから『伊原次官を交代させると医療関係の改革が余計混乱する』という強い指示があったようだ」と打ち明ける。

 それでは、高額療養費を巡る混乱の責任は誰が取るのか。制度を担う保険局長だった鹿沼均氏は周囲に「退任を覚悟している」と打ち明けていたそうだが、菅義偉元首相の秘書官を務めた実力者だけに社会・援護局長への異動で落ち着いた。

 後任の保険局長には年金改革を終えたばかりの間隆一郎氏が年金局長から横滑り。今秋の高額療養費見直しは間氏が担い、鹿沼氏は最高裁で違法と判断された生活保護費引き下げへの対応にあたる。

 予想外な人事の結果、次官レースの行方にも注目が集まる。ただ、意外にもトップを走るのは、間氏でも鹿沼氏でもないという。

 冒頭の中堅幹部は今回の人事で官房長から職業安定局長に栄転した旧労働省出身の村山誠氏の名前を挙げる。「労働系から約10年次官が出ていないため」というのが理由だが、社会保障の難局を乗り切るには力不足との声も省内外にあるという。

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