【経済産業省】政府がラピダス「黄金株」保有 金融支援の条件を取りまとめ

経済産業省は、次世代半導体の量産を目指すラピダス(東京)を念頭に、金融支援を行う際の条件を取りまとめた。政府が出資する場合、経営の重要事項に拒否権を行使できる「黄金株」を保有することが柱。重要技術の国外流出を防止し、経済安全保障を確保する観点から、外資系企業の買収リスクを回避する狙いがある。

 ラピダスは、回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の次世代半導体の国産化を掲げている。今年4月には北海道千歳市の工場で試作ラインを稼働させ、2027年には量産を始める計画。量産開始には総額5兆円が必要とされる。

 政府はこれまでに最大1兆7000億円超の支援を決定しているが、量産開始にはさらなる資金調達が欠かせない。年内には政府が1000億円規模を出資し、国が支援を継続する姿勢を明確に示すことで、民間の出融資の呼び水にする考えだ。

 今年4月には、政府の出資や債務保証を可能にする改正情報処理促進法が国会で成立した。実際の金融支援は、経産省所管の独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」が行う。

 経産省がまとめた金融支援の条件には、民間からの資金調達を最大限図ることが含まれる。財務面では、営業キャッシュフローの継続的な黒字が見込まれることや、適正な水準の自己資本比率を確保していることが盛り込まれた。

 出資に際しては、企業の迅速な経営判断を損なわないよう配慮した上で、政府側が一定の議決権を保有。拒否権付き種類株式(黄金株)の保有を受け入れることも求める。具体的な株式の設計は企業側に委ね、経産省が詳細を審査する。

 公的資金を最大限に回収するため、株式市場の状況や出資先の経営状態を踏まえながら、適切なタイミングで取得した株式を処分する方針。また、モラルハザードを避けるため、債務の全額は保証しないとした。金融支援の対象企業は公募で決定するが、実質的な候補はラピダスに絞られているのが実情だ。

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