
石破茂首相は「外交オンチ」――。こんな悪評が目立つが、責任の一端として、外務省の情報収集能力の弱さがやり玉に挙げられるケースが増えている。
とりわけ最近批判を集めたのが、6月24~25日にベルギーで開かれたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議を巡り、石破首相が直前に出席を取りやめた一件だ。日米が関税交渉で激しい駆け引きを繰り広げる中、NATO首脳会議でも石破首相とトランプ米大統領との直接会談がセットできるのでないかとの期待があった。
しかし、会議の数日前にトランプ氏が欠席するのでないかとの臆測が広がり、政府は同月23日に首相の欠席を表明。その直後にトランプ氏が出席する意向を明らかにし、自民党内からも「貴重な機会をみすみす逃した」(外相経験者)などと批判が巻き起こった。
一連の振り付けをした外務省幹部は、会議に合わせ、NATOとトランプ氏、日本・豪州・ニュージーランド・韓国(IP4)トップによる首脳会議を予定していたが、「この会議が流れたため、首相に無理をしてベルギーまで行ってもらう必要はなくなったと判断した。トランプ氏の出席の有無自体は関係ない」と釈明する。
しかし、トランプ氏が実際にベルギーを訪れるかどうか、外務省が正確に動向をつかんでいたかは疑わしい。関税交渉は、日本側が撤廃にこだわる自動車分野などで膠着状態が続くだけに、トランプ氏と首相が対面で会える機会があるのならば、無駄にできなかったはずだ。
そもそも、日本とNATOは、対中国という観点で安全保障分野の協力関係を深めており、日本の首相はNATO首脳会議に昨年まで3年間、連続で出席していた過去もある。前出の外相経験者は「外務省が首相を欠席させたのは二重三重で罪深い」と憤るが、別の自民党幹部は「外務省が石破首相をまともに支える気がない証左でないか」とも指摘する。