インバウンド消費の行方は? 百貨店業界に見る消費傾向

髙島屋が下方修正 今期は5年ぶりの減益に

 インバウンド(訪日観光客)消費の行方はどうなるのか――。

 髙島屋(村田善郎社長)が今期(2026年2月期)業績予想を下方修正。売上高に当たる営業収益は4930億円(前年同期比1.1%減)、営業利益は500億円(同13%減)となる見通しで、今期は5年ぶりの減益となりそうだ。

 要因は、インバウンド件数(客数)の伸び悩みに加え、物価高などによる客単価の落ち込み。「国内顧客は消費環境の大きな改善は見込まず、インバウンドも更なる円高による単価ダウンを考慮した」(同社)。

 前期(25年2月期)は、営業収益4984億円(前年同期比6.9%増)、営業利益575億円(25.2%増)なるなど、最高益を更新していただけに、インバウンド消費の反動や国内顧客の伸び悩みが直撃した形だ。

 これは髙島屋だけに限った話ではない。

 三越伊勢丹ホールディングスは3月期なので単純比較はできないが、今年6月の既存店売上高は、三越伊勢丹が同9.1%減。高島屋が同2.2%減、J.フロント リテイリングが同4.6%減と、各社とも苦戦した。

 今後、プラス要素として考えられるのは、日本政府が昨年末、中国の富裕層に対して、日本に滞在する際のビザ(査証)を緩和し、観光旅行の滞在日数を倍の30日に延長する方針を示したこと。こうした措置に伴い、中国人の旅行客数が増えることを期待する向きも出ている。

 足元ではトランプ米政権の関税政策や中東の混乱などによる世界的な景気後退の懸念や、徐々に円高傾向になっていることで、今後の先行きに不透明感が漂っている。

 実際、昨年7月1日に1ドル=160円だった為替は、今年7月2日時点で143円。ある百貨店関係者は「インバウンドの人たちを見ていると為替の推移は結構敏感」とし、今後の為替の推移を注視しているようだ。

 今年1年間のインバウンドは4200万人に増加し、消費額も8.5兆円に達するという予測もある中で、今回の高島屋の決算は一過性のものなのか、潮目の変化なのか。今後の消費動向が注目されている。

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