イーロン・マスク氏が率いるAI企業xAIは7月9日(米国時間)、最新の生成AIモデル「Grok 4」をライブストリームで発表した。この新世代モデルでは、学術分野での高度な応答能力と新たな機能群を備え、より実用的なAIとしての完成度が高まっているとされる。同社はまた、サブスクリプションプランに「SuperGrok Heavy」という月額300ドルの上位プランを追加した。
Grok 4は、画像解析や音声応答といった多機能性を備えたAIモデルであり、マスク氏はライブストリーム内で「すべての学術分野においてPh.D.(博士課程)以上の水準で回答できる」と述べた。発表では、高度な数学の問題を解かせたり、2つのブラックホールが衝突する画像の生成や、ワールドシリーズ優勝予測(LAドジャースが21.6%の確率で優勝する)などのデモが披露された。
「Grok 4」には、「Grok 4 Heavy」という高性能モデルも用意されている。Grok 4 Heavyでは、複数のエージェントが並行して問題解決に取り組み、それぞれの成果を「スタディグループのように」比較し、最適な答えを導き出すという。
Grok 4は「Humanity’s Last Exam」において25.4%のスコアを記録した。これはOpenAIの「o3」(21%)やGoogleの「Gemini 2.5 Pro」(21.6%)を上回っており、Grok 4 Heavyではさらにスコアが44.4%に達したとされている。Humanity's Last Examは、100以上の専門分野にまたがる問題を含み、推論力、読解力、論理的思考などを問う難易度の高いAI性能評価基準である。人間の専門家レベルの知識と推論能力を獲得したかどうかを測る「最終関門」という位置づけから、「人類最後の試験」という名称が付けられている。
Grok 4は「SuperGrok」プラン(月額30ドル)および「SuperGrok Heavy」プラン(月額300ドル)で利用できる。SuperGrok Heavyでは、Grok 4 Heavyへの先行アクセスが可能となり、専用サポートも提供される。
xAIは今後、8月にコーディング特化型モデル、9月にマルチモーダル(テキスト・画像・音声などを統合的に扱う)エージェント、10月に動画生成モデルをリリースする予定であり、SuperGrok Heavy契約者はこれらにも優先的にアクセスできるようになる見込みである。
xAIは、Grok 4発表直前に重大なトラブルに見舞われていた。XのGrok公式アカウントで、「ハリウッドのユダヤ人幹部への批判」や「ヒトラーを称賛するような表現」など、反ユダヤ主義と受け取られかねない発言をGrokが自動投稿し、大きな批判を浴びた。xAIは投稿を削除して一時的なアカウント制限を行い、不適切な発言に対処する修正に踏み切った。
Grok 4の発表ではこの件について言及されなかったが、マスク氏は9日のXへの投稿で「Grokはユーザーのプロンプトに対して従順すぎた。言い換えれば、喜ばせようとしすぎて操作されやすかったということだ。その点については現在対処中である」と述べている。