総務省は7月8日、令和7年「情報通信に関する現状報告」(令和7年版情報通信白書)を公表した。昭和48年の第1回公表以来、今回で53回目の公表となる。

今回の白書では、特集として「広がりゆく『社会基盤』としてのデジタル」と題し、社会基盤的な機能を発揮しているデジタル領域拡大(SNS、クラウド等)やAIの爆発的進展の動向、デジタル分野における海外事業者の台頭と我が国の状況等を概観している。

以下、第2節「AIの爆発的進展の動向」のポイントをお伝えしよう。

  • 国内の情報通信の現状を伝える「情報通信白書」 引用:総務省

AIエージェントの動向:各社の定義は?

LLM分野を中心に、最近起きている大きな技術動向の一つとして、最近注目を集めている「AIエージェント」が取り上げられている。

AIエージェントの定義は開発企業によって異なるが、白書では、「設定された目標や、自然言語で与えられた指示に対し、自動的にタスクを決定(必要に応じてタスクを細分化)して処理を実行する機能をもつもの」がAIエージェントと呼ばれる傾向にあると考えられると説明している。

AIエージェント自体は技術的に先進性があるわけではないとの指摘もある一方で、マルチモーダルAIや論理的思考が可能な推論モデルなど、LLMの進化によってAIがより複雑なタスクをこなせることになりつつあることは事実で、今後はLLM等を活用してより使いやすいサービスの登場が増えることが期待されているという。

  • 「AIエージェント」のサービス概要と定義 引用:総務省「情報通信白書」

日本のAI開発・事業展開の動向

AIに関する各種評価レポート等から、「日本は、AIの研究開発力や活用に関して、世界的にリードする国と比べ、高く評価されているとは言えない」と厳しい評価が下されている。

その例として、2024年11月にスタンフォード大学のHAI(Human-Centered Artificial Intelligence)が発表した、2023年のAI活力ランキングにおいて日本は総合9位であり、米国、中国、英国といった国から水をあけられていることが紹介されている。

LLMの開発に関しては、世界の最先端モデルと比較すると、日本のモデルは比較的小規模なモデルが多い傾向があると考えられるという。また、近年では、比較的小規模でありながら高性能なモデルの開発も進んでいる。

  • 日本のAI開発・事業展開の動向 引用:総務省「情報通信白書」

AI利用の現状

同白書では、個人におけるAIの利用状況を把握するため、一般向けにアンケートによる調査を実施。

生成AIサービスを「使っている(過去使ったことがある)」と回答した割合 は26.7%だったという。2023年度に実施した調査では、「生成AIを使っている(過去使ったことがある)」と回答した割合は9.1%だったことを踏まえると、利用経験は拡大していることがうかがえる。

海外の2023年度調査と2024年度調査の結果を比較すると、生成AI利用経験がある割合は、米国は46.3%から68.8%に、ドイツは34.6%から59.2%に、中国は56.3%から81.2%に上昇している。

日本でテキスト生成AIサービスを「使っていない(過去使ったことがない)」と回答した人を対象に利用しない理由を聞いたところ、上から「自分の生活や業務に必要ない」「使い方がわからない」という回答結果となり、利用のハードルが高いことが浮き彫りになった。