富士通とAmadeus Codeは7月1日、富士通研究所と共同開発した音楽生成AIモデル「FUJIYAMA AI SOUND(フジヤマ エーアイ サウンド)」のデモンストレーションを披露した。イベントでは音楽クリエイターや動画クリエイターが音楽生成AIとのライブパフォーマンスなどを披露した。

  • 「FUJIYAMA AI SOUND」発表イベント

    「FUJIYAMA AI SOUND」発表イベント

FUJIYAMA AI SOUNDの特徴

FUJIYAMA AI SOUNDはAI技術と音楽理論、信号処理、数学的アプローチを統合した音声ファイル生成AIモデル。富士通研究所が有する数理最適化や時系列データ処理などの技術と、Amadeus Codeが培ってきた音楽生成ノウハウを融合し、AIによる音楽生成を可能とした。

Amadeus Codeは2012年に設立した、「すべての従業員の幸福を追求すると同時に、すべてのお客様が輝ける世界の実現を、音楽で加速する」をミッションとして掲げる、音楽テクノロジー企業。

同社は2019年に特許技術「MusicTGA」による作曲支援システムを開発。さらに同システムを基盤として日・英・中の3カ国語に対応する音楽データセット「MusicTGA-HR」を構築し運用中だ。また、新規事業の「音会 / OTOKAI」では、音楽を通じた認知症予防による健康寿命の延伸にも取り組む。

Amadeus Codeの代表を務める井上純氏は「バッハがパイプオルガンを弾いたように、モーツァルトがチェンバロを弾いたように、ジミ・ヘンドリックスがエレキギターとアンプリファイアを使いこなしたように、イエロー・マジック・オーケストラがコンピュータで音楽を作り出したように、新しい技術が新しい音楽を作り出してきた。歴史上、楽器が音を作ることはなかったが、AIによって新しい音を作り出せるようになった。FUJIYAMA AI SOUNDは、曲をすべて作るのではなく、クリエイターと共創できるような音楽を作り出す」と、話していた。

  • Amadeus Code 代表 井上純氏

    Amadeus Code 代表 井上純氏

余談だが、FUJIYAMA AI SOUNDのFUJIYAMAは、富士通とAmadeus Code、さらにYOU(クリエイター自身)を組み合わせた造語に由来するそうだ。

  • FUJIYAMA AI SOUNDの由来

    FUJIYAMA AI SOUNDの由来

クリエイターには唯一無二の音声ファイルを

FUJIYAMA AI SOUNDは、Amadeus Codeが運営する音楽データ配信プラットフォーム「Evoke Music」で、「SOUND」機能として音声ファイルの提供を開始する。オリジナルの30秒間の音楽的な音声ファイルをAIで自動生成し、ユーザーに提供する。Evoke Musicに会員登録すれば誰でも音楽を視聴可能。1曲1ドルで購入可能だ。

従来のライセンス型の音声ファイル販売は、ライセンスにより複数ユーザー間でファイルが共有されるため「被り」が発生する場合もある。一方でFUJIYAMA AI SOUNDは販売による著作権譲渡のため、クリエイターは唯一無二の音声ファイルを入手できる。

購入した音声ファイルは他者と共有されず、クリエイターは自分のオリジナルコンテンツとして、作品制作にフル活用できる。購入された音声ファイルはEvoke Music上のライブラリからも削除される。

FUJIYAMA AI SOUNDが販売する音声ファイルはベースやドラムなどのリズムパートが含まれていないため、音楽クリエイターが「ループ素材」として楽曲制作などに使える。既存のループ素材と重ねたり、自分でビートなどのリズムパートを加えたりと、自由にアレンジ可能。

著作権クリアで商用利用可能

FUJIYAMA AI SOUNDにおける音声ファイルの生成には、Amadeus Codeが独自に開発し著作権を保有する約5万曲以上のデータセット「MusicTGA-HR」が使用されている。そのため、AIによって生成された音声ファイルには、著作権が問題となる要素が含まれない。

これにより、YouTube配信、ゲーム、広告、音楽など、さまざまなメディアへの商用展開が可能となる。

  • オリジナルのデータセットと独自の開発言語で著作権を担保している

    オリジナルのデータセットと独自の開発言語で著作権を担保している

FUJIYAMA AI SOUNDとクリエイターの共創デモンストレーション

イベントでは、FUJIYAMA AI SOUNDが作り出した音楽と音楽クリエイターにより制作された楽曲『Shapin’ Tomorrow with You 〜 音で遊べ。音で語れ。音で未来を変えろ。〜』のデモが披露された。

この楽曲はFUJIYAMA AI SOUNDで生成した音声ファイルを使用し、FUJIYAMA AI SOUNDのブランドメッセージである「クリエイターとAIの共存」を体現する公式ローンチアンセムとして制作された。ビートメイク / 作詞 / ボイスを呼煙魔(コエンマ)氏が担当。プロデュース / ミックスをAmadeus Codeの井上純氏が手掛けた。

デモの演奏にはギタリストのYukihide YT Takiyama氏と、Amadeus Codeの北川暁氏も参加。

『Shapin’ Tomorrow with You 〜 音で遊べ。音で語れ。音で未来を変えろ。〜』

また、同イベントではFUJIYAMA AI SOUNDで生成した音声ファイルを用いて、クリエイターがオリジナルのトラックを作成するデモも紹介された。

音楽生成AIモデル「FUJIYAMA AI SOUND(フジヤマ エーアイ サウンド)」デモ』