調達地域のリスク分散へ JERAが米国からLNGを調達

「今後、世界的にLNG(液化天然ガス)プロジェクトの建設費・操業費高騰の懸念があり、早いタイミングで新規の長期契約に合意した。LNGの確保に加え、調達価格の安定化にも寄与するものと考えている」

 こう語るのは、JERA常務執行役員の津輕亮介氏。

 東京電力と中部電力が折半出資するJERAが、新たに米国から年間最大550万㌧のLNGを調達することを決めた。同社のLNGの年間取扱量は約3000~3500万㌧と、世界最大級。今回の契約により、米国からの調達比率が従来の1割から3割程度まで高まる見通し。中東、アジア、米国など、調達先の多様化を図ることで、地域リスクを分散することが狙いだ。

 また、今回調達するLNGは仕向け地(輸出先の国)の制限がない。このため、電力需給の変動に柔軟に対応できることや日本のエネルギー安定供給の強化も期待できるという。

 現在はトランプ米大統領が、米国産の石油やLNGなどを輸出する方針を掲げている。トランプ氏にはエネルギー輸出を米国の貿易赤字削減につなげたいとの思惑があると見られており、関税協議を続けている日本にとっては、アピール材料の一つになる可能性も。

 もっとも、津輕氏は「(今回の契約は)日本政府のエネルギー政策とも整合するものと考えている」としながらも、日米両政府の要請を受けたものではないと強調。調達戦略の見直しは昨春から着手してきたとして、「あくまでも当社が安定供給を実現していくための施策として判断した」としている。

 それでも、米国政府は今回の契約について、米国国内で5万人以上の雇用を生み、米国のGDP(国内総生産)を2000億㌦(約29兆円)以上押し上げる効果があるとの試算を発表。日米両政府それぞれの思惑が入り乱れながら、トランプ時代の経営のかじ取りを進めるJERAである。

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