【株価はどう動く?】トランプ政策と日銀の利上げ観測で株価の上値を抑える展開も?

日経平均は4万円の壁に直面

 米トランプ大統領が、選挙戦で公約した3つのことが、世界の株式市場にとって、大きな「壁」となっています。

 第1は関税です。4月2日に相互関税を発動し、米国と取引する多くの国から高関税を集めています。このことをトランプ大統領は、貿易赤字、膨大な対外債務を抱える米国を「手術した」と表現しています。個別交渉は残していますが、一段落したと見ているようです。

 第2に不法移民の追放です。この問題は紛糾しています。移民が多いカリフォルニア州ロサンゼルスではデモが起き、2000人の州兵に加えて700人の海兵隊を派遣する事態になりました。

 トランプ大統領を支持する人たちにとって、不法移民の追放は大賛成だと思います。ただ、ロサンゼルスは民主党の牙城です。これが長引くと、トランプ政権にとってリスクが高まりますし、市場の動揺につながりかねません。

 第3に規制緩和です。米国の無駄なコストを削減するために、テスラ創業者のイーロン・マスク氏をトップに「DOGE」(政府効率化省)が活動してきました。政府職員や、対外援助の大幅な削減など、誰がやっても抵抗がある取り組みです。

 ですからマスク氏は、債務の削減に取り組む一方で、減税を打とうとするトランプ氏を批判して、足元で両者はかつての蜜月から対立となりました。ただ、ある専門家に聞くと、今は利害が対立しているけれども、利益が一致すれば再び2人が握手することもあり得ると指摘していました。

 関税は強行しましたが、不法移民の追放と規制緩和は簡単ではないという状況です。このことは、株式市場の不安要因になっています。日本の株式市場は2025年4月7日の安値を底に株価が戻っていますが、4万円の壁を突破できない状況が続くのではないかと見ています。

 以上は日本を取り巻く外的要因ですが、内的要因でも気になる材料が出てきています。それは日本銀行が25年に入ってから国債の月の購入額を前年の半分に減らしていることです。

 これは金利を上げていくための1つの準備段階だと思いますが、「M2」という市場に流れている通貨の供給量が失速しています。M2の失速は過去の景気悪化の時に匹敵するくらいになっており、景気悪化の予兆ではないかということが、白鴎大学教授の嶋中雄二氏のレポートで指摘されています。

 M2の失速は、お金の量が絞られているということですから金融引き締めです。日銀は今、前総裁の黒田東彦氏が進めてきた「異次元の金融緩和」から、金融引き締めに転じているということです。これは日本の株価の上値を抑えます。

 9月の日銀の金融政策決定会合は要注意で、一部の専門家の間では、ここで利上げを行うのではないかという見通しが出ています。9月に0・75%まで引き上げ、26年には1%に引き上げるという見方です。

 もし、9月に利上げが行われると、そこで円高となり、株安のリスクが出てきます。相場の波動から言うと二番底を経て、株価は戻っていましたが、このままでは4万2000円台の高値を抜くことはできません。

 時間の波動から見ても、②番底が入った4月7日から「3月またがり60日」が最初の警戒ポイントになりますが、6月7日まで株価は目一杯戻った形になっています。

 このまま7月の参議院議員選挙まで3万5000円から4万円のゾーンでの保ち合いが続いていくとしたら、9月の日銀の利上げで急落する恐れがあります。

 9月は4月7日から6カ月目になります。時間の波動では短期の日柄は2~3カ月、中期は数カ月から半年、長期は12~13カ月ですから、波動から見ても9月7日近辺は気を付ける必要があります。

 安倍晋三政権以降、株式市場から見ると「選挙は買い」が続いてきました。今回の参院選でも、選挙前には与党は対策でいいことを言いますから、今回も「選挙は買い」になる可能性があります。

 例えば石破茂首相は、GDP(国内総生産)を2040年に1000兆円にし、平均所得を今の5割以上増加させるという目標を掲げようとしていますが、これも選挙前にある動きの1つです。

 仮に参院選で与党が勝利すれば、さらに株価が上がるかもしれません。ただ、8月に株価を上げたとしても、前述の通り9月は要警戒で「売りの急所」になる可能性があります。

 6月から8月にかけての株価の動きは、日経平均は下がりも上がりもしないという状況が続くと見ており、個別物色相場になります。防衛関連など、上昇が期待できる銘柄はありますが、8月末にかけて個人投資家としては、利益が出たら利益確定して、現金化比率を高めるのも一案です。

 今、売っておけば、次の下落局面で買えるからです。最悪なのは、高値で買って、その後の下落で売るに売れずに塩漬けになることです。なので日本の株式市場を取り巻く内外情勢は予断を許しません。

 前述の通り、三菱重工業(東証PRM 7011)、川崎重工業(東証PRM 7012)、IHI(東証PRM 7013)といった防衛関連は人気化していますし、日銀が利上げするとなれば銀行、証券、生保・損保も上昇の可能性が高まります。

 つまり選別買いの展開が予想されます。その意味で、今は投資の中上級者向けの相場だと言えるかもしれません。日経平均が上がっているからと言って油断はできないわけです。

 ただ、個別物色相場では、いい銘柄に的を絞れば、利益を出せるチャンスは大いにあります。例えば、初級者の方々には向かないかもしれませんが、暗号資産関連株となっているメタプラネット(東証STD 3350)は、ビットコインを買うことで株価を上げています。

 こうした個別物色相場の背景は、世界中にマネーが溢れている「マネーバブル」になっているからです。トランプマネーバブル相場が到来しているのです。