ドリーム・アーツは6月26日、日本の大企業におけるAI活用に関する構想「DAPA(DreamArts Practical AI:ダーパ)」を発表した。DAPAは、「何を自動化し、何を支援するか」を明確に区別したうえで、AIの得意領域を最大限に生かすことを目的とした、実務実装志向のAI活用構想。
代表取締役社長の山本孝昭氏は、「この2年間、経営層でAI構想について議論してきた。その根底には、IT業界にありがちなバスワードに乗らないという想いがあった」と、満を持して「DAPA」の公開に至ったことを明らかにした。
4つ目の事業戦略の柱に
同社は価値提供するターゲットエリアを「BD:Big Donuts」と呼称・定義している。「ドーナツ」は、企業内システムの比喩であり、穴の開いている部分は、いわゆるERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムであり、ここは狙わないという。
ドーナツの周囲を現場部門向けのシステム領域に見立て、ここをターゲットとしている。山本氏は「ドーナツの周囲はAIも含めて、急拡大中のエリアであり、ビッグドーナツの会社になるのが長期的目標」と述べた。
昨年には、「デジタルの民主化」「MCSA(Mission Critical Sys. Aid)」「グローバル・コネクト」という3つの成長戦略が発表された。「DAPA」はこれらに続く、4つ目の成長戦略となる。
AIエージェントへの架け橋となるDAPA
「DAPA」の詳細については、取締役執行 役員CTO/サービス&プロダクト開発本部本部長 石田健亮氏が説明を行った。同氏は、昨今AIエージェントに注目が集まっているが、AIエージェントが実務で使えるようになるには、10年以上かかるのではないかとの見方を示した。
「2025年はエージェントの時代と言われている。チャットボットやRAGを生成AIの第1世代アプリと考えると、AIエージェントが第2世代アプリとなるのか。エージェントは定義がバラバラであり、どこまで使えるかもまだわかっていない」(石田氏)
このようなAIエージェントを取り巻く不透明な状況を踏まえ、同社はAIエージェントに至るまでのステップとして DAPAを提唱する。「DAPAを挟むことで、AIエージェントが広がっていくと見ている」(石田氏)
DAPAはAIによる業務の自動化も含みつつ、単なる自動化を超えた「業務支援としてのAI」に主眼を置いており、以下の実装ポイントを基軸としている。
- 業務プロセスエンジンへのAI組み込み
- 業務データベースとのリアルタイム連携
- プロンプトのデータベース化と“市民開発者”による継続的育成
- 複数AIエンジンの選択性と柔軟な切り替え性
- アクセス権限管理との統合設計
- 出力の信頼性を高めるフィルタリング・マスキング機構
DAPAのコンセプトの核は「実用的、実務的、実践的」であり、大企業の意思決定プロセスにAIを溶け込ませることを狙っている。
DAPA構想第1弾として「SmartDB」にAI機能搭載
DAPA構想第1弾として、主力製品である大企業向けノーコード内製化ツール「SmartDB」において、DAPAに基づく新たなAI機能および関連サービスを提供する。 2025年内にテストユーザーとの先行プロジェクトを開始、2026年4月に全ユーザーへのサービス提供開始を予定している。
具体的には、「AIを業務プロセス=意思決定プロセスに溶け込ませる」というDAPAの基本方針に基づき、AIのリアルタイム連携やプロンプトのデータベース化をはじめとする実践的なAI機能群をリリースする。
これにより必然的な付帯手続きの無駄を排除し、組織全体のパフォーマンスをブーストするとともに、現場主導のAI活用を安全かつ継続的に進化させる基盤を提供する。
なお、昨今AIエージェントのプラットフォームを打ち出すベンダーが出てきているが、同社はエージェントのオーケストレーションの基盤として働きかけることは考えていないという。
それよりも、山本氏は「SmartDBの中にさまざまなデータベースが作られているので、そこに格納されているデータが自動的に連携する世界観を目指したい」と語っていた。