【金融庁】地域金融機関への公的資金注入制度を大幅延長

金融庁は地銀など、地域金融機関に公的資金を使って資本注入する制度を大幅に延長する。現行の金融機能強化法に基づく制度は来年3月末で申請期限を迎える。今回は期限を10年以上延ばすとともに、地域金融機関の再編を促すための交付金の使い勝手も良くし、経営基盤強化に向けた取り組みを強力に後押しする構えだ。

 背景には、地域金融システムの持続可能性に対する強い危機感がある。

 人口減少が進む中、現状のビジネスモデルのままでは多くの地銀などが貸出先や預金の減少に見舞われ、いずれ経営が立ち行かなくなりかねない。閉塞状況を打開するには、リスクテイク能力を高めたり、人材を強化したりして「攻め」のビジネスモデルに転換する必要があるが、財務基盤が厚く、経営余力がなければ難しい。

 金融庁は今年に入り、地銀などのトップとの直接対話を通じて、地域経済や金融機関自身の持続可能性を検証する「頭取ヒアリング」に乗り出している。

 公的支援の強化が、経営改革に取り組む環境づくりに役立つと見ている。単独での生き残りが厳しいと判断した金融機関には、大手グループの傘下入りなどを促す構えで、地域金融再編の動きが活発になる可能性もある。

 一方で、かつては金融危機時や大災害時などの例外的な支援制度だった公的資金注入について、申請のハードルを下げ、地域金融機関の経営立て直しに幅広く活用することには「モラルハザードを招きかねない」(外資系証券アナリスト)と懸念する声がある。

 税金が原資の公的資金は、返済されなければ国民負担につながる。制度を大幅に延長するなら、注入行の生き残り戦略やガバナンスの健全性をしっかりチェックする監督体制の整備が金融庁に求められる。

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