
狙いは非通信事業の強化
”通信と金融の融合”での出遅れを巻き返すことはできるのか――。
NTTドコモはインターネット銀行大手、住信SBIネット銀行の買収を決めた。同社にはSBIホールディングス(HD)と三井住友信託銀行がそれぞれ約34%を出資してきたが、ドコモはSBI HDの持ち分を買い取るとともに、5月30日から7月10日までTOB(株式公開買い付け)を実施。住信SBIネット銀株の65.81%の取得を目指す。総投資額は約4200億円に上る見通しだ。
ドコモの狙いは非通信事業の強化だ。本丸の携帯通信サービスは品質の劣化が指摘されたことや競合他社の攻勢などでシェアが減少傾向にある。一方、決済やコンテンツといった非通信事業は堅調。中でも金融分野は成長株の位置付けだ。
ところがドコモは通信大手の中で唯一、銀行業に未参入だった。競合他社は傘下の銀行口座とスマートフォン決済を連携させると預金金利を優遇するサービスなどで若年層の囲い込みを進めている。ドコモの前田義晃社長は「銀行業への参入でドコモの金融サービスがフルラインアップで揃う」と強調する。
ただ、参入までに時間を空費した印象は否めない。ドコモは数年前からネット銀行の買収に向けて複数社と交渉してきたが、折り合いがつかなかった。今年2月に住信SBIネット銀との交渉がまとまりかけたものの、条件が合わず一度は破談になったという。
それでも住信SBIネット銀は店舗やATMを持たない”身軽”な存在で、口座開設や決済などを外部に提供するサービス「ネオバンク」で大手企業の顧客も抱える。諦めきれないドコモの秋波が実った格好だが、NTTはSBI HDに約1100億円を出資することになった。「SBI HD会長兼社長の北尾吉孝氏の交渉力が一枚上手だった」(関係者)。
NTT社長の島田明氏は、住信SBIネット銀を「帯にも、たすきにもなる、最高のパートナーだ」と自ら評価したが、協業の成果が早々に試される。