【最終章を迎える渋谷再開発】すり鉢の上に何層ものデッキが掛かる! 東急などが手掛ける「渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期」の工事着工へ

「渋谷を多様な人々を受け入れる開かれたまちとして、災害に強いまちづくりや回遊性向上に取り組んでいる」─。東急社長の堀江正博氏はこう語る。

 100年に一度と言われる東京・渋谷の大改造。2002年の東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通を契機に地下化されて以降、常に姿を変えている渋谷再開発が最終章に入る。

 30年度に渋谷駅と渋谷の東西南北を地上とデッキ階で結ぶ多層な歩行者ネットワークが誕生する。渋谷は、すり鉢状の地形で谷底に駅がある。そのため、東西南北を行き来する回遊性が大きな課題だった。「工事の途中で通路や改札、階段の位置が移設を繰り返している」との声が駅の利用者から上がっている。

 しかし30年度にはJR線と東京メトロ銀座線の改札が3階レベルで結ばれるなど、2~4階レベルでの高さとなるデッキ階の歩行者通路ができあがる。中でも銀座線渋谷駅ホームの直上に空中回廊として通行可能な「4階東口スカイウェイ(仮称)」が整備され、宮益坂から駅を通り抜け、「渋谷マークシティ」や桜丘、渋谷中央街方面に上下することなく移動することが可能になる。また、33年度にはスクランブル交差点にも一度の上下移動で済むようになる。

 移動のみならず、消費を活発化させる動きも出てきそうだ。JR東日本社長の喜㔟陽一氏は「3月に開業した高輪ゲートウェイシティと渋谷を連携させ、日本のどこにもないナイトタイムエコノミー(夜間の経済活動)を実現したい」と意欲を示す。

 このほど着工した東急百貨店東横店の跡地やJR渋谷駅の直上にできる「渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)」は31年度に完成する予定だが、中央棟の屋上には各大使館などと連携した文化交流体験施設をつくり、上空施設や広場などが5カ所整備される。

 まさに「駅まち一体のプロジェクト、コミュニティーが形成されることになる」(東京メトロ社長の山村明義氏)が、建設現場の人手不足や資材高など懸念材料は横たわる。各社の底力が試されることになる。

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