NTTデータGを完全子会社化 グループ再編進めるNTT

グループ再編は中長期の成長に向けた最適解なのか─―。

 NTTは情報システム構築やデータセンター(DC)事業を手がける上場子会社のNTTデータグループを完全子会社化する。NTTはNTTデータG株の58%を保有してきたが、残り42%をTOB(株式公開買い付け)で取得。TOB期間は5月9日から6月19日まで。投資総額は約2兆3700億円に上る見通しだ。

 NTTは親子上場を解消して意思決定の円滑化を図るべく、グループ再編を推進。2020年12月には4兆円超を投じてNTTドコモを完全子会社化していた。データGはDCをはじめとする海外事業を拡大しており、国内通信事業の伸び悩みが懸念されるNTTにとって〝虎の子〟と言える存在だ。

 NTT社長の島田明氏は、データG完全子会社化の意義を「ビジネスのグローバル展開には迅速な投資判断が求められる」と強調した。

 データGの完全子会社化により、NTTグループ内の親子上場はなくなるため、グループ再編は最終段階に入る。

 だが、再編の効果については疑問の声も挙がる。ドコモは23年春ごろから携帯通信の電波がつながりにくいとの不満が噴出し、シェアをジリジリと落としている。

 ソフトバンクの宮川潤一社長は5月8日の決算説明会で、NTTによるデータGの完全子会社化について「ドコモを見る限り最適とは思えない。データGの佐々木裕社長の良さが半減するのではと心配している」と皮肉を込めた。

 一般論としては、事業のグローバル化を進めたければ海外企業を買収するのが早道だが、NTTは過去に、米AT&Tワイヤレスやインドのタタ・テレサービシズなどへの投資で失敗し、総額3兆円超とも言われる損失を被った。

「グループ再編の方が手堅いと思って進めてしまうのは、海外案件失敗のトラウマが抜けていないからではないか。内向きの体質は変わっていない」(業界関係者)。再編の効果をどれだけ早く示せるかが問われる。

ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト・矢嶋康次が読む『トランプ2.0』