【農林水産省】備蓄米・毎月10万トン放出へ 米価高騰で牛丼値上げ

コメの高騰はいつまで続くのか――。

 コメの流通停滞を受け、政府備蓄米はこれまで3回、合わせて31万トンが放出された。

 石破茂首相は江藤拓農水相に対し、新米が出回る前の今夏まで毎月、政府備蓄米の供給を続けるよう指示。政府は新米が出回る今夏の端境期まで、今後も備蓄米を毎月10万トンずつ放出する方向で調整に入った。

 2024年6月末時点で、91万トンだった政府備蓄米の在庫量は、3回の放出で60万トンに目減りした。

 江藤農水相は今年5月9日の記者会見で、「国民の安全・安心、備えということを考えると、備蓄米は一定水準を維持するということは本来的な使命としてある」と強調。ただ、需給の逼迫を防ぐため、毎年20万トン程度行っている備蓄米の買い入れは無期限に延期している。

 コメの円滑な流通に向けて始めた放出だが、思うような効果が得られていない。スーパーなどの小売業者まで十分な量が流通しておらず、販売価格の高値が続いている。

 農林水産省の発表によると、全国のスーパー約1000店舗の購入データを基にした4月28日~5月4日のコメ5キログラムあたりの平均販売価格は、前週に比べて19円安の4214円だった。18週ぶりに下落に転じたものの、前年同期より2倍超の水準で推移している。

 農林水産省の渡辺毅次官は5月2日、JA全農(全国農業協同組合連合会)の桑田義文理事長と面会し、供給拡大を要請した。

 コメなどの原材料価格高騰に物流費や人件費の上昇も重なり、吉野家は4月10日から牛丼大盛などを値上げした。ただ、主力の牛丼並盛は498円(税込み)で据え置いている。ライバルのすき家は3月18日から牛丼並盛を30円高い480円(同)にした他、松屋も4月22日から牛めし並盛を30円値上げして460円(同)としている。デフレ時代に280円で提供されたこともある牛丼並盛りだが、現在は値上げの圧力が強い。

「備蓄米を放出する決断をしたにもかかわらず、期待された結果が出ていないことについては、申し訳ないという気持ちは持っている」(江藤氏)。コメの需給と価格が安定するまで、政府の苦悩は続く。

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