
総務省は、元タレント中居正広氏の性暴力を認定したフジテレビ第三者委員会に人権意識の欠如などを指摘された同社と親会社フジ・メディア・ホールディングス(HD)に対し、厳重注意の行政指導を行った。指導文書は、フジが「社会的責任に対する自覚を欠き、放送に対する国民の信頼を失墜させた」と指摘。経営陣の意識改革を強く要請した。
文書は、フジの一連の問題は「放送事業者による自主自律を基本とする放送法の枠組みを揺るがすもので、極めて遺憾だ」と強調。人権尊重やコーポレートガバナンス(企業統治)の確立に向け、両社が3月末に公表した再発防止策の実施状況を3カ月以内に報告するよう求めている。
村上誠一郎総務相も、「本来有すべき公共性に対する自覚を欠き、社会的使命を十分に果たすことなく、広告によって成り立つ民間放送事業の存立基盤を失いかねない」と強く批判。「今回の問題は非常に重たいものだ」と述べた。総務省はフジの清水賢治社長とフジHDの金光修社長を総務省に呼び、情報流通行政局長が大臣名の指導文書を手渡した。両社は「指導内容を真摯に受け止め、対応していく」とコメントした。
フジ・メディアHDに対しては、同社株の7%超を保有する米投資ファンド、ダルトン・インベストメンツが6月の株主総会で、SBIHDの北尾吉孝会長兼社長ら12人を取締役候補として提案すると発表し、経営体制そのものを巡る動きもにわかに騒がしくなっている。
北尾氏はフジ・メディアHDが発表した新体制が「不十分だ」と批判。ダルトンとフジ側が協議し改めて役員案を出すことなどを要求している。20年前に、実業家の堀江貴文氏が率いていた旧ライブドアがフジ支配を狙って買収を仕掛けたニッポン放送株争奪戦で、北尾氏は「ホワイトナイト(白馬の騎士)」の役割を果たしたが、今回はフジに対し「敵対するなら徹底的に勝負する」と宣言した。
実業家として復活を果たした堀江氏も再びフジの経営改革に意欲を示しており、当面はきな臭い展開が続きそうだ。