Vox Mediaは5月3日(米国時間)、「Firefox could be doomed without Google search deal, says executive|The Verge」において、Googleに対する規制案がMozilla Firefoxの存続を脅かしていると報じた。

米国連邦地方裁判所は昨年、Googleが検索市場を違法に独占していると判決を下した(参考:「2024年10月 | 公正取引委員会」)。原告の米司法省(DOJ: United States Department of Justice)は状況を改善するため、Googleの独占的立場を制限したいと考え複数の提案をしているが、その目的に反してMozillaが危機的状況に陥る可能性があるという。

  • Firefox could be doomed without Google search deal、says executive|The Verge

    Firefox could be doomed without Google search deal, says executive|The Verge

Googleへの規制案がMozillaを脅かす

Vox Mediaによると米司法省は複数の規制を提案している。その1つにサードパーティのWebブラウザーのデフォルト検索エンジンの購入規制があるという。Firefoxを含むサードパーティのWebブラウザはデフォルト検索エンジンの地位を事実上販売しており、Googleがこれを購入しているとされる。

Mozilla Corporationの最高財務責任者(CFO: Chief Financial Officer)を務めるEric Muhlheim氏によると、FirefoxはMozillaの収益の約90%を占め、その収益の約85%はGoogleとの契約によるものだという。規制によりこの収益を失えば、Mozillaは大幅な人員削減を余儀なくされ、Firefox開発への投資を縮小せざるを得なくなり、Firefoxを倒産に追い込む可能性があると警告している。

規制は検索市場解放を目指すものだが、Mozilla Firefoxが失われるとGoogle Chromeのシェア拡大の可能性が高く、Googleの検索市場独占を強化する結果につながりかねない。

代替収益の確保は難しい

Eric Muhlheim氏は収益の代替について次のように述べている。

「Googleからの収益を代替するのは、他の検索エンジンプロバイダーとの契約やGoogleとの非独占契約を結ぶほど容易ではない」

MozillaはMicrosoft Bingが収益を代替する可能性について協議したことがあるという。短期的な影響は明らかで、Googleを入札から排除すると競争相手がいなくなり収益は減少する可能性が高い。

中期的にはシェアの縮小が予想されている。2021年から2022年にかけて実施されたデフォルト検索エンジンのBingへの切り替え調査では収益の減少につながることが判明し、2014年から2017年にかけて実施されたYahoo!への切り替えではユーザー離れを招いたとされる。

長期的にはGoogleの影響力低下により、高品質な新しい検索エンジンが誕生する可能性がある。その結果、それら企業からの収益がMozillaの財政を潤す可能性がある。

つまり、規制によりMozillaは短期および中期的に窮地に追い込まれることになる。それを乗り越えると財政の健全化につながる可能性がある。

収益多様化とプライバシーの保護

米司法省はEric Muhlheim氏の証言に対し反対尋問をしている。Vox Mediaによると、同氏は単一顧客からの収益に依存しないことが望ましいと認め、Operaのように検索広告よりもWebブラウザの広告で多くの収益を得られることにも同調したとされる。しかしながら、そのような事業拡大は広告主の発言力が強くなり、製品のプライバシー保護に影響があると懸念を示したという。

市場の独占は顧客から選択肢を奪い、新しい可能性の芽を摘むことにもなり望ましい状況ではない。しかしながら、この提案を強行すると不本意な結果をもたらす可能性が高い。Mozillaに訪れる未来はGoogleに依存した経営判断の誤りだと指摘し、当然の結果だとの見方もあるが、すべてのユーザーの利益となる司法判断が望まれている。