
先の大戦以降、今年で80年の節目を迎え、西側同盟は最大の危機に瀕している。米トランプ政権の政策は一見、奇異に見えるが、これは国際社会が招いた必然性である。
米国は1776年の独立以来、産業を起こし、近代国になるや、国際秩序維持や世界の発展のために巨額の投資もしてきた。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、湾岸戦争などで国民の血を犠牲にして、貢献してきたのは、単に米国の利益のためだけではない。
今は、またウクライナ戦争で西側諸国は米国支援を求めている。しかし、米国民の感情は、今まで米国の恩恵にあずかってきたことを当然視するな、なぜ、もっと自助努力をしないのか、である。
その米国には不法移民が麻薬を持ち込み、途上国は安価な商品を米国に輸出して利益を得るだけでなく、米国人の雇用を奪い、時にはインフレをもたらす。なぜ米国だけがこんな目にあうのか。
トランプ政権はこのような状況から米国民の生活・雇用・物価高騰などを救い、かつての豊かな米国社会を取り戻すための政策(MAGA=Make America Great Again、偉大なる米国の再建)を目標として関税・国際協力や国際援助からの脱退・不法移民の追放・同盟国の防衛費増・パナマ運河の返還などを進めている。内外に批判は多いが、これが米国民の共感なのである。トランプ大統領が個人的趣味でやっているわけではない。
ウクライナ戦争の停戦はかなり難しく、完全な停戦は実現しない。ロシアは、経済制裁の解除、エネルギー資源の権益を含め、巧妙な取引を進めつつ、国内の防衛産業再生を狙ってウクライナ全土の確保に向けて戦闘を継続するであろう。
北大西洋条約機構(NATO、32カ国)は、もはや一致した対応をとることが難しく、有志連合(15カ国から20カ国)の自助努力や防衛産業協力をすすめ、更に、欧州連合(EU=27カ国)との協力によって欧州の自主防衛を進めようとしている。英仏の核抑止も重要な課題になる。ウクライナは大統領選挙になれば駐英国大使であるザルジニー元参謀総長が戻り、ウクライナ軍の立て直しを行って対ロ反転攻勢をもくろむであろう。
そのロシアには、中国や北朝鮮が支援し、ウクライナ戦争は終焉するどころか、もっと拡大する。
インド太平洋には、日米同盟以外に確立した同盟国関係はない。多くの国が米国、中国、ロシアと何らかの関係を有しており、立場を明確にすることなく国益を模索し、どこの国にも良い顔を見せようとする。それが国家が無事安寧に生存することのできる技と考えているからである。
このような地域に同盟は成り立たない。日本は国家のあり方を真剣に考えるべき時期ではないのか。