
米トランプ大統領が日本にも24%の追加関税を課したことは、外務省にも大きな衝撃を与えた。同省は2月の日米首脳会談以来、経済局と北米局がさまざまなチャンネルで米政権の意向を探ってきたが、「われわれが事前に聞いていたレベルより、はるかに厳しい内容となった」(同省幹部)からだ。
同省は直接交渉にあたる武藤容治経済産業相や経済産業省任せにするのでなく、国家安全保障局長に転じた岡野正敬前外務事務次官の力も借りながら、ホワイトハウスや米通商代表部(USTR)の実務者と水面下の協議を重ねてきた。
同省幹部は「事前の接触では、一定の関税を課されることは避けられないものの、欧州連合(EU)などを上回るほどにはならない」という感触を得ていたと明かす。この情報は岩屋毅外相を通じ、石破茂首相のもとにも届けられていたという。
しかし、ふたを開けると、EUの追加関税は20%、EUから離脱した英国は10%となり、日本はそれらを上回る形になった。日本の主力産業である自動車にはさらに25%の追加関税を課せられ、自民党内からは「完敗」などの厳しい批判が巻き起こっている。
前出の同省幹部は「今の米政権はごく限られた幹部だけで物事を決める傾向が強い。われわれが政権内部の人物と踏んで交渉した相手も、結局は蚊帳の外だったというパターンが多かった」と苦しい内情を打ち明ける。
トランプ氏のターゲットは日本だけでないとはいえ、事態打開の手段がなかなか見いだせないのが実情だ。