三菱UFJ信託銀行、リコー、メジャメンツは4月18日、株主総会をオンライン配信する際にリアルタイムで字幕を提供する「株主総会リアルタイム字幕サービス」の提供を開始したことを発表した。

サービス開発の背景

2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化された。これに伴い、株主総会においても障がいを持つ株主が参加できる環境の整備が求められている。

メジャメンツが実施したアンケート調査によると、当事者からは「(株主総会に)行けない。聞こえない(ので参加しない)」(40代女性)や「(株主総会について)内容が理解できるか分からず参加する勇気が出ない」(40代女性)といった意見があり、株主総会の参加にハードルを抱えていることがうかがえる。

そうした中、株主総会ではかねてより聴覚障がい者向けの施策として、手話通訳を用意するなどの取り組みが行われてきた。しかし、国内の聴覚障がい者において手話を利用している人は11.1%ほどとされ、手話通訳だけでは不十分だとされる。

そのため、株主総会では「リアルタイム字幕表示」が実効性の高い施策として期待される。2024年度6月時点で、三菱UFJ信託銀行が提供する株主向けオンラインサイト「Engagement Portal」において総会ライブ配信を行っている企業(105社)の中で、外部ツールなどを使用して字幕を導入した社数は13社。これは2023年度から比較すると倍以上に増えており、字幕導入に関する問い合わせ件数は増加傾向にあるという。

株主総会リアルタイム字幕サービスの特長

従来の字幕表示サービスでは、自動でテキストを文字起こしするAI音声認識エンジンの利用が増加しているが、AIの活用だけでは総会における発話を正確に表現しきれず、誤字や脱字も発生する。

3社が開発した株主総会リアルタイム字幕サービスでは、AI音声認識エンジンを利用した字幕に対し、スタッフが誤字を修正し、より正確な情報を伝えるサービスを実現した。修正スタッフは、メジャメンツが運営している障がい者専門クラウドソーシングサービス「サニーバンク」に会員登録している障がい当事者(主に発達障がい者や精神障がい者)が担当する。

独自の修正作業のトレーニングを受けた障がい当事者スタッフが連携を取りながら誤変換を修正することで、素早く、正確性を担保したサービスの提供を目指す。聴覚に障がいのある人への配慮を他の障がいのある人が対応する(補い合う)環境を構築している点が特徴である。

字幕テキストを生成するシステムには、リコーが提供する「聴覚障がい者向けコミュニケーションサービスPekoe(ペコ)」を採用。同サービスは聴覚障がい者とのコミュニケーションをサポートする目的で、2022年8月に発売を開始した。