KDDIは4月17日、WAKONX Broadcastを構成するアセットとして、5G SA(Standalone)商用ネットワークでネットワークスライシングを活用したソリューションを放送事業者向けに提供開始したことを発表した。スタジアムやアリーナなどの映像中継を実施する特定のエリアで提供する。

このソリューションは3月18日から30日まで実施された第97回選抜高等学校野球大会の中継において、毎日放送が利用。スマートフォンで撮影した縦型動画の映像制作を中継内で実現した。

  • スマホで撮影した映像を中継で放送した様子

    スマホで撮影した映像を中継で放送した様子

ソリューション提供の背景

スタジアムなどの屋外から安定した映像を生中継するには、ケーブル敷設を伴う複雑なオペレーションが必要だ。そのため、マイクロ波や衛星波を利用する中継車からのケーブル敷設作業、専用機器や多くの制作スタッフの確保など、多大なコストと労力が課題となっていた。

KDDIは2023年、5G SAスライシングを活用した全国高校野球選手権大会の中継技術実証に成功している。この実証により、作業負荷の大きい有線ケーブルやマイクロ波を使用した場合と比較して、申し分ない映像品質での伝送が可能であることと、無線ならではの自在なライブ伝送が有用であることが確認された。

これらの実証や通信品質向上の取り組みを通じ、さらなる映像中継の作業負荷解消と新たな映像体験に寄与するため、新ソリューションを提供開始する。

ソリューションの概要

KDDIは5Gの大容量・高速な通信を実現するSub6(3.7ギガヘルツ帯 / 4.0ギガヘルツ帯)基地局約3.9万局を展開し、2024年度にはSub6基地局の出力アップやアンテナ角度の最適化により利用可能エリアを拡大した。5G SAはSub6基地局全域で利用可能。

今回提供を開始するソリューションは、観客などが利用する一般のスマートフォンのネットワークと、映像回線として利用するネットワークを論理的に分離することにより、映像中継に必要な通信品質を安定的に提供する。

ケーブルの敷設を必要とせず無線での中継が可能となるため、映像中継が簡易化されるなど、専用機器の置き換えによるコスト削減が見込まれる。また、スマートフォンカメラやドローンを活用した映像中継では、多様な視点による臨場感ある映像体験の提供も期待できる。今後は野球や陸上競技などのスポーツ中継制作向けに提供するという。