ラピダスがシンガポールの半導体設計会社と提携

「クエスト・グローバルのファウンドリー(受託生産)・パートナーとなることで、同社が持つ顧客ネットワークへのアクセスが可能になる。顧客へのアクセスと設計実績の確保は重要で、今回の提携は両社にとってウィン・ウィンの関係となる」

 こう語るのは、ラピダス社長の小池淳義氏。

 先端半導体の製造を目指すラピダスが、シンガポールの半導体設計会社クエスト・グローバルとMOC(協力覚書)を締結した。同社からエンジニアの受け入れなど、技術的な支援を受けることで、ラピダスは低消費電力で高性能なAI(人工知能)半導体を迅速に提供できる体制の構築を目指す。

 2027年に回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端半導体の量産を目指すラピダス。経済産業書が3月に最大8025億円の追加支援を決定。これまで政府はラピダスに対して9200億円の支援をしており、国の支援は合計1兆7000億円規模になる。

 ラピダスは最先端半導体の量産に必要な資金は5兆円規模と試算。現状では、民間企業からの出資は合計73億円にとどまっており、資金面の不安はまだまだ尽きない。

 もっとも、同社はすでに北海道千歳市の工場で、試作ラインの稼働に向けた準備が完了。2ナノの最先端半導体を無事に試作できれば、民間企業から資金を集めやすくなる可能性はある。ただ、資金調達に成功しても、量産時には歩留まり(良品率)が厳しく問われるだけに、同社に立ちはだかる壁は高い。

 小池氏は「今回のご認可で研究開発に必要な2兆円余りの資金はだいたい賄うことができた。後は次の研究開発や量産に必要な3兆円余りをいかに準備していくか。2ナノの量産技術の確率は難しく、決して楽観できる状況ではないが、必ずや量産に向けて進んでいきたい」と語る。

 米国と違い、とかく、日本の投資判断は慎重になりがち。そうした中で、同社の生みの苦しみは、今後もしばらく続きそうだ。

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