
初めてダボス会議に参加したのは、もう10年以上前のことになる。私自身は、Young Global Leaderとして参加の機会をもらった。
ダボス会議は、約50年前に、ハーバードへの留学から戻ったクラウス・シュワブ氏が、ハーバード等の教授を招き、欧州経営者会議として、経営者のレベルアップの場を作ったのが始まりだ。そこに、世界の経営者や政治家などが徐々に参加するようになり、世界経済フォーラムとして変遷した。
今では、大国の国家元首・大臣、大企業の経営トップ、学者の他に、NGO(非政府組織)の代表、アーティスト、アスリート、社会起業家、スタートアップなど、幅広い分野の幅広い世代のリーダーが参加する年次総会として、ダボス会議がある。
ダボス会議は、まさに、世界のリーダーの品評会だ。登壇者が大統領であっても、スピーチが面白くなければ、会場から人は立ち去ってくし、素晴らしい内容であれば、スタンディングオベーションも起こる。
また、私は、某大臣のお手伝いをさせていただいたため、ゴードン・ブラウン元首相やビル・ゲイツ氏、クリスティーナ・ラガルド氏などとの密室での会談や会場での立ち話を間近で拝見させていただく機会を得た。
このリーダー観察を通じて、組織や国の大小に拘らず、世界を動かすリーダーの共通点が見えてきた。それは「立体的な視野の大きさ」だ。
まずは、視野の広さ。自分の関係分野だけでなく、地球規模、宇宙の規模での広い視野を持つ。次に、長さ。人生の長さを超えて、宇宙誕生の37億年前から数千年先の人類にまで思いを馳せる長い時間軸での視野がある。
そして、深さ。世界平和といった高邁な世界を見つめつつ、人間の欲望や悪意などにまで視野を持ち、人間というものに対する高くて深い視野を持つ。
そのため、こうしたリーダーたちの話は、哲学や歴史に裏付けられ、世界規模での思考に基づくことになる。自社の利益だけではなく、世界のために、自社はどのような役割を果たすのか、我が国はどのような役割を果たすのかを話す。
特に、デジタル技術が急速に発展してきた2010年以降は、人類の未来について言及するリーダーが多くなった。自分たちの時代だけでなく、その先の世代のために何ができるか。こうした言葉は、国や宗教を超えて、多くの人に耳を傾けさせる。
今は、世界が分断を始め、自国主義の動きが強まっているが、いい意味でも悪い意味でも、世界を動かすリーダーは世界を俯瞰している。いかに視野を立体的に広げるか。それがリーダーの成長の条件ではないかと思う。