エンジニアやギークの間で話題を呼んだ多機能ハッキングツール「Flipper Zero」の開発元Flipper Devicesが新製品「BUSY Bar」の詳細を公開し、再び注目を集めている。

「Flipper Zero」は、NFC、RFID、赤外線、無線通信(Sub-1GHz)などの信号を読み書き・解析できるコンパクトなガジェットである。キーレスエントリーやカード認証のテスト、IoT機器の調査から単なるいたずらまで、遊び心をくすぐるハッキングツールとして話題になった。新製品の「BUSY Bar」は集中して作業するための「生産性マルチツール」である。Flipper Zeroとは全く異なるガジェットだが、Flipperの特徴といえる遊び心を受け継いでいる。

BUSY Barの基本的な機能は、カスタマイズ可能なピクセル表示付きタイマーである。前面には72x16ピクセルのRGB LEDディスプレイが広がり、背面には160x80ピクセルの小型モノクロOLEDディスプレイを備えている。本体上部には大きなボタンとスクロールホイールを搭載している。

例えば、コーディングに集中したい時やチャット中に、「BUSY(取り込み中)」、「ON CALL(通話中)」といったステータスや、終了するまでの残り時間を前面ディスプレイに表示できる。周囲から見やすい場所に置いたり、付属スタンドでモニター上部に設置したりすることで、周囲の人が邪魔できないことに気づき、話しかけるタイミングを把握できる。

さらにBUSY Barは、Wi-FiやBluetooth、USB-C経由でPC(Windows/Mac)やスマートフォン(iOS/Android)と接続し、さまざまなアプリとの組み合わせで、その機能を拡張できる。

例えば、Googleカレンダーと連携させて、会議の時間になると自動的にステータスが「会議中」に切り替わるようにしたり、Zoomなどの通話アプリを使用している間は「通話中」と表示させることが可能になる。これにより、ステータスの切り替え忘れを防ぎ、常に正確な状況を周囲に伝えられる。

スマートホーム連携にも対応している。スマートホーム機器の共通規格「Matter」に準拠し、Apple HomeKit、Google Home、オープンソースの「Home Assistant」と連携可能だ。例えば、オンライン会議の多いユーザーであれば、「部屋のドアを施錠し、Web会議用の照明に切り替える」といった自動化を、BUSY Barのボタンひとつで操作できる。

集中力を妨げる要因は、周囲からの物理的な邪魔だけではない。スマートフォンの通知も集中を乱す原因となる。BUSY Barはスマートフォンの通知を一時的にブロックしたり、TikTokやInstagramなど特定アプリへのアクセスを制限する機能も備えている。また、「ポモドーロ・テクニック」(短時間の集中作業と休憩を交互に繰り返す時間管理法)を実践するためのタイマーとしても活用可能だ。

Flipper Devicesらしく、BUSY Barは最初からOpen APIが提供され、ソフトウェア開発キットとライブラリを用いて、開発者が自由に機能を拡張し、自身のプロジェクトへ組み込める仕様となっている。

BUSY Barの価格は249ドル。単なるタイマーとして見ると高価だが、多彩な機能と優れた拡張性、カスタマイズ性を考えると、ユーザーの使い方次第で新たな価値を見出せるデバイスと言えそうだ。