JR東日本が社運を賭けた「高輪ゲートウェイシティ」がまちびらき

「自動運転、空飛ぶクルマ、ドローンやロボットが縦横に展開し、都市エネルギーとしての水素の可能性にも挑戦する」とはJR東日本首脳の弁。

 同社が社運をかけて建設している再開発事業「高輪ゲートウェイシティ」がまちびらきを迎えた。6000億円を投じて5棟のビルが並び立つ予定。まずは商業施設「ニュウマン高輪」やオフィスなどが入るツインタワー「THE LINKPILLAR1」が開業した。

 オフィスフロアにはKDDIとマルハニチロが入居しており、開業と同時にほぼ満床だ。2025年中には約2万人が働くオフィス街となる。「リンクピラー2」や高級賃貸マンションなどが入る残りの2棟は26年春に開業。同時期には日本橋1丁目や八重洲にも大規模再開発事業が完成するため、競争は激しくなる。

 その中でも高輪ゲートウェイシティが他と一線を画すのは「100年先の未来を見据えた心豊かな暮らしを作る実験場」というコンセプトだ。敷地内には時速5キロで移動し、センサーに手をかざすと減速する自動走行モビリティや宅配ロボットが所狭しと走り回る。

 また、東京大学がキャンパスを開き、ウイルスを1個から検出して感染を事前に防ぐ「1分子検出」などの研究を行ったり、スタートアップ30社が入居するビジネス創造施設も設置。社会課題の解決に向けた取り組みを加速させる考えだ。

 加えて、1億枚以上の発行枚数を誇る交通系ICカード「Suica(スイカ)」に集まるビッグデータを連動させ、同エリアに住む人々の日々の暮らしや健康、環境に関わる技術革新を生み出す。さらに28年には「空飛ぶクルマ」を導入する予定だ。

 高輪ゲートウェイシティは車両基地の跡地で開発されているが、高層ビルが建ち並ぶ「汐留シオサイト」も車両基地の跡地だ。当初、汐留はオフィスの集積が中心となり、休日になると人の姿がなくなり、「賑わいをつくるという点では失敗事例」(専門家)と言われた。

 その点、高輪ゲートウェイは非鉄道事業を鉄道事業と同じ比率に高める目標を持つJR東にとっては〝肝〟となる。都市間競争が激しくなる中、地元住民も含めた、人を惹きつける仕掛けづくりが求められる。

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