
国土交通省が発表した25年1月1日時点の公示地価は、全国全用途平均が4年連続で上昇し、新型コロナウイルス禍後の回復が鮮明となった。都心部や観光地では訪日客(インバウンド)の増加に伴う投資や再開発が上昇をけん引、地方圏でも4年連続の上昇となっており、景気の緩やかな回復傾向が継続している。
全国の住宅地のうち上位を多く占めたのが、北海道富良野市、長野県白馬村、沖縄県宮古島市などの訪日客に人気が高い観光地だ。別荘やペンションなどの需要が増加している。また、こうした観光地では、海外投資家らがホテルや商業施設などの需要を見込んだ不動産投資を積極的に進めており、商業地なども上昇傾向。京都市や大阪市の他、東京都台東区の浅草駅周辺など、都心部でも、ホテルや商業施設の開発が押し上げに寄与した。
東京23区でマンション販売価格が1億円台となるなど高値圏で推移する中、購入価格を抑えるために郊外の戸建てに目を向ける動きも出ている。東京都内への通勤圏内に位置する千葉県流山市の地点は、子育て世帯向けの施策が注目され、東京圏の住宅地の上昇率上位入りした。
この他、大型再開発が地価の押し上げ要因となったのは、東京都渋谷区の商業地だ。駅周辺の大型複合施設の開業などにより、オフィス需要なども堅調に推移し、人の流れが増えることへの期待感が高まっている。
一方、半導体などの工場進出効果も継続した。次世代半導体の生産を目指すラピダスの工場建設が進行中の北海道千歳市や、台湾積体電路製造(TSMC)の工場がある熊本県菊陽町の商業地なども高い伸びとなった。
今後も上昇傾向が続くのかどうかは、高騰する建設費や日銀の追加利上げ動向などに影響されそうだ。大手不動産会社幹部は「住宅ローン金利はまだ低水準で、現時点では影響は出ていない」と語る。ただ、国交省関係者は「資材価格高騰が地価の上昇圧力の低下要因だ」と指摘しており、建設計画の見直しなどが相次げば景気の回復傾向に水を差す可能性もある。