
ビール大手4社の2024年12月期連結決算が出そろった。2023年10月の酒税法改正により、ビール1缶(350㎖)あたり7円程度が減税され、第三のビールとの価格差が縮まることで、消費者の〝ビール回帰〟が見られた。
各社特色のある高付加価値を打ち出して消費を刺激し、価格改定も売上を押し上げて4社とも増収となった。サッポロホールディングス(HD)の関係者は「若者のビール離れがあるという声もあるが、ビールにはまだまだ可能性がある。若い人にももっと魅力を伝えていく」と手応えを語る。
増益だったのは、サントリーホールディングス(HD)とアサヒグループホールディングス(GHD)。サントリーHDの最終利益は前年同期比2%増の1761億円、アサヒGHDは同17.1%増の1920億円。一方、キリンホールディングスは48.3%減の582億円、サッポロHDは同11.6%減の77億円と減益だった。
利益面で明暗を分けたのは海外事業の比率だ。サントリーHDとアサヒGHDは、M&A(合併・買収)を積極的に進め、海外売上比率は5割を超える。
サントリーHDは、10年前に買収したアメリカ・ビーム社の社名を24年4月に「ビームサントリー」から「サントリーグローバルスピリッツ」に変更、ビーム社でのサントリーの企業文化の受け入れが進んだ。『ジムビーム』『メーカーズマーク』『山崎』といった商品を武器に、グローバルスピリッツ市場における世界での確固たる地位を築こうと着々と準備を進める。
アサヒGHDは『スーパードライ』ブランドに磨きをかけ、日本以外でも10%売上を伸ばした。缶ビールでも生ビールのような泡を楽しみながらゴクゴク飲むことができるフルオープン型の〝生ジョッキ缶〟は海外でも非常に注目を集め、韓国でも人気を博している。
日本経済は原料高と実質賃金がマイナスという状況下で、物価高騰に対して消費が思うように伸びない中、海外でいかに稼ぐかが利益を左右した。
ただ、4月からの日本での値上げに関し、アサヒGHD取締役グループCFO(最高財務責任者)の崎田薫氏は「物価高が進むことでより消費は慎重になる」という見方を示した。
物価高に負けないブランドをどう磨いていくか。また、需要が伸びているノンアルコール商品、低アルコール商品と、RTD(缶チューハイ類)の市場開拓が長期的な明暗を分けるポイントとなりそうだ。