〈トランプ2.0をどう読むか?〉寺島実郎・日本総合研究所会長を直撃!

トランプ政権は 「デジタル・金融複合体」

 ─ 2月28日の米トランプ大統領とウクライナ・ゼレンスキー大統領との首脳会談は互いに口論となるなど、異例の展開となりました。各国への追加関税措置など、米国第一主義を掲げるトランプ政権に世界が振り回されている形ですが、寺島さんはトランプ政権の現状をどのように把握していますか。

 寺島 「トランプ2・0(第二次トランプ政権)」をどう見るかということですが、一見すると、トランプ大統領は好き勝手に動いているように見えますが、実態は異なります。

 わたしは以前からトランプ2・0政権は「デジタル・金融複合体」の性格を帯びていると言い続けてきましたが、イーロン・マスク氏に象徴されるような、シリコンバレーとウォールストリートによって、むしろ、トランプ大統領が操り人形化されていると見るべきだと思っています。

トランプ関税に戦々恐々の日本企業 投資手控えなど悪影響も

 ─ トランプ大統領は、シリコンバレーとウォールストリートの連中にいいように操られていると。

 寺島 そうです。1月15日に前大統領のバイデン氏が最後の国民演説で、「テック産業複合体」という言葉を使って、トランプ政権に対して、これからIT企業が過度に巨大な影響力を持つことは危険だと警鐘を鳴らしました。

 これはバイデン氏が、1961年に当時のアイゼンハワー大統領が退任演説で「産軍複合体」という言葉を用いたことにひっかけている。アイゼンハワー大統領は、軍と産業が複合体となり、米国が戦争なしでは生きられない産業構造の国になりつつあるのは危険だ、ということを訴えたわけです。

 ─ 権力や富が一部の人たちに集中することを懸念したわけですね。

 寺島 だから、バイデン氏の言葉を聞いて、わたしも驚きました。デジタル・金融複合体、テック産業複合体と、微妙に言葉は違いますが、意味するところは同じだったからです。

 今はシリコンバレーのビッグテック経営者と呼ばれる人たちがトランプ政権に急速にすり寄っています。1月20日のトランプ大統領の就任式には、マスク氏だけでなく、メタのザッカーバーグ氏やアマゾンのべゾス氏などがこぞって参列した。彼らは皆、トランプ氏に多額の資金を寄付しています。

 もともと、シリコンバレーというのは、いわば「多国籍軍」です。マスク氏は南アフリカ生まれで、カナダ、米国の三重国籍を持っています。要するに、中国人にしろ、インド人にしろ、多様なバックグラウンドを持った人たちが、自由かつ豊かな発想で活躍できるのがシリコンバレーの良いところだったのです。

 だからこそ、シリコンバレーの経営者たちは移民排斥を掲げる共和党やトランプ氏には本来、距離をとっていました。それが一気にトランプ氏に近づくようになったわけです。

 ─ そうなると、彼らの思惑は何なのか?

 寺島 なぜなら、トランプ氏は彼らにとって都合がいいからです。

 今は世界各国が巨大IT企業に対して、サービスを利用・消費する国・地域で課税を可能にするデジタル課税を導入しようとしています。豪州では昨年、16歳未満の子どものSNS(交流サイト)利用を禁じる法案が可決されましたが、ブラジルでは最高裁がマスク氏のX(旧ツイッター)に対してサービス停止命令を出し、ブラジルとEU(欧州連合)はSNSの規制に向けた連携を強めています。

 要するに、IT企業の経営者たちにしてみれば、自分たちは徐々に規制に締め上げられている。そうした規制に対して企業単独で向き合うのではなく、米国という国家と共に向き合った方が有利だと判断して、トランプ氏にすり寄った方がいいという考えに、ここ数年、変化が起きていると感じます。

 ─ それに乗せられる方も問題ですが、われわれも、そうした傾向があることは冷静に見ておく必要がありますね。

 寺島 はい。マスク氏はトランプ大統領の選挙戦支援に2億5000万㌦(400億円)以上を投じたと言われています。しかも、財務長官のスコット・ベッセント氏は、キー・スクエア・グループというヘッジファンドの経営者です。

 つまり、財務長官は投資ファンド、そして、政府効率化省(DOGE)のトップが電気自動車(EV)のテスラやXを率いるマスク氏ということで、シリコンバレーとウォールストリートが、トランプ政権にベッタリとくっついているような状態です。

 しかも、それはトランプ大統領が専制化しているのではなくて、シリコンバレーとウォールストリートの欲望にトランプ氏が操られているのが実態だと思います。

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