クラウドとオンライン環境で利用することが多い生成AIをはじめとした大規模言語モデル(LLM)の活用だが、機内において航空客室乗務員も活用したい。そんなニーズに富士通とAIソリューション事業を手掛けるヘッドウォータースが実証実験を実施した。
通信が厳しい環境での言語モデル活用の課題
今年の1月27日から2025年3月26日にかけて行われた実証実験では、JAL(日本航空)の航空客室乗務員のフライト中のタブレット端末でのレポート作成にLLMを活用するというもので、機内のWi-Fiでも一部のエリアでは不安定になる接続への課題に対処すべく、レポート作成業務の効率化に取り組んでいる。
生成AIをはじめとした大規模言語モデル(LLM)の活用の多くは、オンラインでその恩恵を享受しているが、オフライン環境や通信のよくない環境でのタブレットで、普通に利用できるアプリとなると軽量化が難しい。マイクロソフトがOSSでも公開している小規模言語モデル(SLM)Phiシリーズ(Phi-4)と富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」を用いることで、客室乗務員業務に特化したモデルへのファインチューニングし、チャット形式でのレポート作成が可能な生成AIソリューションのプロトタイプアプリ「JAL-AI Report」に貢献している。
従来と比較して、レポート作成にかかる作業時間や修正発生率の削減を達成。今後、実用に向けた実証を重ねると同時に、業務特化したSLMを「Fujitsu Kozuchi」の生成AIとして活用、オフライン環境で動作するオンデバイス型・エッジ型・オンプレミス型での提供を目指す考えだ。小型言語モデル(SLM)Phi-1
2023年6月に登場した小型言語モデル(SLM)Phi-1は、精度と小規模化を追求しながらバージョンを重ねており、最新のPhi-4では、重要な単語、トークンを特定するPivotal Token Search(ピボタルトークン検索)を用いた最適化を図ることで小型言語モデルに磨きをかけているが、生物学、物理学、化学など難易度の高いベンチマークデータセットGPQAや数学的能力を評価するMATHにおいて特徴的なスコアを示している。
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生物学、物理学、化学など難易度の高いベンチマークデータセットGPQAや数学的能力を評価するMATHでも特徴的なスコアを得るphi-4(Microsoft技術資料より)