リコージャパンは3月25日、全国47都道府県において地方銀行や信用金庫などの地域金融機関と地元支社との協定を締結したことを発表し記者説明会を開いた。同社は今後、地域金融機関を通じて中堅・中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を強化するという。

リコージャパンと金融機関の共創の意義

リコージャパンはデジタル庁が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に基づいて、地域金融機関との連携により各地域の中堅・中小企業のDXを支援する。これにより、経済成長と持続可能な社会の同軸化を促進するという。

同社はリコーグループの国内販売会社であり、全都道府県に支社を設置。48支社(東京都内は2支社)と5つの組織で全国をカバーしており、約7400人の営業担当と約4400人のカスタマーエンジニアが地域密着型で伴走支援できるのが同社の強みである。

  • 地域に根差した営業網がリコージャパンの強み

    地域に根差した営業網がリコージャパンの強み

同社のビジネスコンセプトは「Customer's Customer Success ~お客様のその先のお客様にまで届く価値を創出する~」。このコンセプトでは、単に顧客にソリューションを納品するだけではなく、その先にある顧客にまで価値提供を目指す姿勢を表している。

  • リコージャパンのビジネスコンセプト

    リコージャパンのビジネスコンセプト

地域金融機関との共創においては、金融機関を通じて、リコージャパンが提供するDX・GX(グリーントランスフォーメーション)を推進するソリューションを地域の企業に提供する。これにより、地域企業が金融機関に相談すれば課題を解決できる仕組みを構築し、地域の発展にも貢献する。

同社が初めて地域金融機関と連携を開始したのは、2019年5月。2020年までに28都道府県で51契約を締結すると、2022年には金融機関との共創を専門に推進する金融共創ビジネス営業部を設立した。これまでに各地域の金融機関を通じた地域企業の紹介は6000社以上、うち2000件超が成約に至っている。

エンタープライズ事業本部長の石田貴彦氏によると、地域密着の営業組織が価値を提供できる点や、GXソリューションなどSDGsに資するリコーグループの取り組み、社内実践や導入事例に裏付けられた顧客本位の価値提供が中堅・中小企業に評価され、成約を獲得できているという。

同氏は「あくまで金融機関との契約数が目標ではなく、各地域の企業に貢献する件数の増加を目指している。将来的には経済成長と地方創生にも貢献していきたい」とも話していた。

  • リコージャパン 常務執行役員 エンタープライズ事業本部 事業本部長 石田貴彦氏

    リコージャパン 常務執行役員 エンタープライズ事業本部 事業本部長 石田貴彦氏

地域企業のDX支援のスキーム

金融機関の渉外担当者が日常業務で地域企業からの相談を受ける中で、デジタルツールの活用による業務効率化が見込める場合は、リコージャパンが金融機関を通じて取引先への同行訪問や課題解決に資するツールを地域企業に提供する。

その後、リコージャパンが企業が抱える課題を解決するためのIT導入のサポートやIT関連補助金の申請支援をするとともに、金融機関は融資を提案。効果検証フェーズまで伴走支援することで、地域企業のDXを推進する。

  • DX支援のスキーム

    DX支援のスキーム

これにより、金融機関はITを活用した経営支援強化による価値向上や、取引先の業績向上による新たな資金ニーズの獲得、倒産や廃業リスクの低減が期待できる。リコージャパンは金融機関を介した各地域のチャネル開拓や経営層との関係性強化が見込める。

リコージャパンは金融機関向けの具体的な施策として、支店向けの小規模なDX勉強会、案件対応や現場同行、個別テーマに基づく研修会、実際のITツールを活用したDX体験会などを開催する。さらには金融機関が取材するイベントの支援なども行うという。

  • リコージャパンによる伴走型の支援

    リコージャパンによる伴走型の支援

金融共創ビジネス営業部の部長を務める須山哲男氏は、昨今の金融機関支援のトレンドについて、「顧客課題を直接ヒアリングできるオフラインイベント(DX体験会)の開催、地域の脱炭素化に積極的な金融機関からのGX手段の依頼、自らのDXにも課題を抱える金融機関自体のデジタル化に関する相談が増えている」と紹介した。

  • リコージャパン エンタープライズ事業本部 金融共創ビジネス営業部 部長 須山哲男氏

    リコージャパン エンタープライズ事業本部 金融共創ビジネス営業部 部長 須山哲男氏