Datadog Japanは3月24日、都内で事業戦略説明会を開催した。説明には、同社 プレジデント&カントリーゼネラルマネージャー 日本法人社長の正井拓己氏が立った。
積極的な投資でポートフォリオを拡大してきたDatadog
まず、正井氏はDatadogのグローバルにおける近況について紹介した。同氏は「Datadogはさまざまなクラウド環境に対応し、開発、セキュリティ、運用、ビジネスシーンで利用可能なUX(ユーザー体験)を提供し、サーバ、コンテナ、アプリケーション、クラウドサービスからのデータ、トレース、ログを収集して多層的な監視を可能にしている。製品を活用することで、単一のプラットフォームで全データを管理し、シームレスな監視を実現するオブザーバビリティ統合プラットフォームを提供している」と述べた。
現在、同社は33カ国で事業展開し、従業員数は6500人となっており、直近12カ月間の売上高は前年同期比26%増の26億8000ドル。年間売上高に加え、四半期売上高も右肩上がりに成長し、売り上げの約28%はR&D(研究開発)関連の投資に振り向けており、顧客数は3万社に達している。正井氏は「積極的なR&Dの投資により、ポートフォリオを拡大している。毎年、R&Dと製品強化に再投資を行い、これは重要な戦略になっている」と話す。
こうした積極的な投資によりポートフォリオを拡大し、同社のプラットフォーム上では23カテゴリーの製品を提供し、ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)が10万ドル以上、同100万ドル以上の顧客数も着実に増加しているようだ。
同氏は「一度、当社の製品を利用すると部門や製品をまたいだ形で利用してもらえている。実際、製品の導入も約8割のユーザーが2製品以上、半数以上が4製品以上、1割が8製品以上導入している。これは当社の製品ポートフォリオが市場に受け入れられており、ひいては伸びしろはまだまだある。R&Dへの投資と比例するように関連する社員数も増加しており、こうした投資が当社を支えており、競合他社と比較した際の優位性とも言える」と強調する。
正井氏は「われわれのプラットフォームの重要な点は、共有プラットフォームサービスとAIで強化された単一の統合プラットフォーム上でエンドツーエンドのオブザーバビリティの機能を提供している点。インフラ監視からAPM(アプリケーションパフォーマンス管理)、リアルタイムユーザーモニタリング、ログ管理セキュリティ、本番・開発環境の監視までを含めてサポートしている」と力を込める。こうしたこともあり、同社はガートナーが定義する「Health & Performance Analytics」市場において2022年から首位を維持している。
好調を維持する日本市場におけるビジネス
続いて、日本における事業戦略に話は及んだ。日本法人は2019年に設立し、2023年には国内データセンターと新しい東京オフィスを開設し、2024年はミッドマーケット部門の設立や認定資格試験の日本語化、パートナーシップの発表、フラッグシップイベントの開催などを実現してきた。
その結果、国内で2021年12月~2024年12月の3年間におけるサブスクリプション売上が2倍、導入社数は2000社、従業員数は2倍にそれぞれ拡大。また、同時期における金融業界のサブスクリプション売上が4倍、製造業とインターネット&テクノロジー業界のサブスクリプション売上が2.5倍に増加。
正井氏は「昨年6月に発足したミッドマーケット部門は、1000人~5000人以下の従業員規模の多様な業種の顧客を担当し、スクウェア・エニックスやCCCMKホールディングスで導入されており、手ごたえを感じている」と振り返った。
そして、2025年は西日本担当組織の設立を予定。当該地域におけるデマンド増に対応し、年内にセールスとプリセールスを大阪拠点に配置を予定し、エンタープライズ領域にフォーカスしつつ、新たなパートナーシップを立ち上げ、キックオフイベントの開催を予定している。
パートナー戦略の一環でNTTデータとパートナー契約
製品戦略としては、同社の3本柱の主要機能「インフラメトリクス」「ログ」「APM」に「クラウドセキュリティ」「オンコール」「AI」を加えた6製品に注力していく。
同氏は「クラウドセキュリティは、DevSecOpsの実現に向けて既存機能と連携した価値創出を図り、昨年発表した『Datadogオンコール』によりモニタリングからページング、インシデント対応までを単一のプラットフォームで実装できるようになる。そして、同じく昨年に発表したAI関連の機能である『LLMオブザーバビリティ』では、チャットボットをはじめとしたLLM(大規模言語モデル)アプリケーション開発・運用していくうえで発生する課題を解決することが可能だ」と説明した。
同社はLLMオブザーバビリティのほか、AIで管理する機能として「Watchdog」「Bits AI」、AIを管理する機能ではLLMオブザーバビリティに加え、「AI Integration」などを提供している。
一方、パートナーシップについて同社は「クラウドサービスプロバイダー」と、リセラーやコンサルティングを含めた「チャネルパートナー」の2軸を持っている。2024年はクラウドサービスプロバイダーに関して、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)のサポートを正式に開始し、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloudを含めて4大クラウドすべてをカバーした。
チャネルパートナーとは認定資格試験の日本語化により、認定エンジニアの大幅に増加させたほか、これまで同社のパートナー制度の最高位であるゴールドティア認定のパートナーはCTCのみだったが、これにアイレット、キンドリル、京セラコミュニケーションシステムが加わる形となり、昨年10月にはアクセンチュアと国内におけるパートナーシップ契約を締結した。
2025年におけるパートナー戦略の重点分野は、オブザーバビリティを日本で広げていくためのパートナーエコシステムの推進、Datadog認定エンジニアの増員、パートナーへの支援強化、関西地域でのパートナーシップの立ち上げ、4大クラウド領域で高い専門性を持つパートナーとの協業、大手SIパートナーとの協業を強化していくという。
その布石として、3月24日に東京エレクトロンデバイスと販売代理店契約を締結したほか 、NTTデータと新たなパートナーシップを発表している。NTTデータとは生成AIのビジネス活用、DevSecOps、運用の高度化、開発手法の変化など、システム環境やアプリケーション運用で多様化するニーズに対応していくほか、NTTデータの生成AIやハイブリッドクラウドのサービス開発・運用において、Datadogを活用したソリューションを推進。
具体的には、NTTデータのSRE(Site Reliability Engineering)支援サービス「まかせいのう」へのDatadogの搭載や、データセンター、クラウドサービス「OpenCanvas」、運用サービス「iRES」などとDatadogを組み合わせて、統合的なオブザーバビリティソリューションとして提供を進めていく考えだ。
最後に正井氏は「引き続き日本市場への積極投資を行う。組織を拡大し、お客さま・パートナーを支援できる体制を構築し、オブザーバビリティ市場の拡大を確実にするため関西地域担当のチームを立ち上げる。今後、パートナーエコシステムの一層の拡大、特にデリバリーの強化を図り、パートナービジネスの比重を高めていく。また、新規顧客の獲得に加え、既存顧客における導入製品を拡大することで、売り上げの増加を目指す。そのためにセキュリティやAIなどの新規分野に加え、APM、ログ、オンコールでは既存市場のリプレイスを積極的に進めていきたいと考えている」と述べ、話を結んだ。