【厚生労働省】1兆円の医療費削減に向け、「類似薬」の保険外し案が浮上

日本維新の会が2025年度予算案を巡る自民、公明との3党協議の中で、市販薬に似た医療用医薬品を公的医療保険から外す案を提示したことが、厚生労働省や医療関係団体に波紋を広げている。

 維新は年約1兆円の医療費を浮かせ、現役世代の社会保険料を下げる方策と主張するが、医療関係団体は猛反発。日本医師会常任理事の宮川政昭氏は、「風邪薬などが全額自己負担になることで受診控えによる健康被害の悪化が懸念される。特に子育て世代は大きな負担増になる」と強く反論している。

 市販薬と成分が似た医療用医薬品は「OTC類似薬」と呼ばれる。厚労省幹部は「今のところOTC類似薬の明確な定義はないが、処方箋が必要な医薬品から市販薬であるOTCに転用された約2700品目の『スイッチOTC医薬品』や、古くから使われ安全性が高い湿布薬など計5000~6000品目程度が該当するとみられる」と説明する。

 OTC類似薬の保険適用の見直し議論は約30年前から政府内で続いており、現在でも社会保障改革工程に盛り込まれている。これまでも日医や日本薬剤師会は強硬に反対しており、過去の診療報酬改定を通じて保険適用外と決まったのは「栄養補給目的のビタミン剤の処方」や「美容目的での保湿剤の処方」など、わずかな事例しかない。

 OTC類似薬を保険適用外にすると、医療機関や薬局の収入が大きく減ることが見込まれる。日医などがこの改革案に反対する真の理由は、ここにあるのだが、別の同省幹部は「患者の利便性を考慮すると、保険から外せるのは安全性の高い湿布や点眼薬などごく一部の薬に限られ、財源捻出もわずかになるのでは」との見方を示す。

 3党は今後、社会保障改革に関する協議体をつくり、OTC類似薬の扱いなどを議論し、結論が出れば26年度から実施する構え。兆円単位の医療費削減をもくろむ維新の主張に国民が賛同するのか不透明感も漂う。

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