OpenAIは3月13日(米国時間)、「OpenAI’s proposals for the U.S. AI Action Plan|OpenAI」において、「米国AIアクションプラン」に対する提言を発表した。
この提言は米国のAIに関する主導権を強化し、経済を成長させ、世界一の競争力を維持し、国家安全保障を実現する政策提案とされる。主に世界のリーダーを目指している中国を念頭に、その脅威と必要な対抗策を示している。
提言全文は「(PDF) [OpenAI Response] OSTP/NSF RFI: Notice Request for Information on the Development of an Artificial Intelligence (AI) Action Plan - Google Docs」から閲覧することができる。
中国の戦略的優位性
提言では現在の中国の戦略的優位性について解説している。その概要は次のとおり。
- データ、エネルギー、技術力のある人材、半導体開発能力を高めるために必要な資金など、独裁国家は必要なリソースを迅速に調達できる
- Huaweiのように、中国はAIツールや国家建設インフラ資金を必要とする国々に圧力を加えることで、DeepSeekのような中国依存のAIシステム導入を拡大する
- 米国の各州は独自の法律を制定することで制裁金(利益)を得られる。このような法律は、中国企業よりも米国企業に対して施行しやすく、負担の大きいコンプライアンス要件を課す可能性があり、競争力を阻害し、国家安全保障を毀損する可能性がある。また、米国の起業家が利用できる学習データの品質、レベル、消費者や企業にとっての有用性を低下させる可能性もある
- 米国のように法律で学習データを明確に保護していない、またはEUのように知的財産保有者のオプトアウト制度を通じて学習データを規制している民主主義国家では、知的財産保有者は制裁金から利益を得られる。一方で中国は知的財産を尊重しておらず、すでに(米国と)同程度の学習データを保有している可能性が高く、米国のAI研究は比較的不利な立場に置かれている。そのため、知的財産保有者を保護しても米国はほとんど得をしない
中国に勝つために必要な取り組み
中国の優位性に打ち勝ち、経済成長を成し遂げるためとして、OpenAIは施策を提案している。その概要は次のとおり。
- AI輸出において対象国ごとにレベルを設定し、輸出管理規制を行うことで米国AIを保護する
- 中国と同様に保護された知的財産からの学習を許可する。これが実現できなければ、AI競争は終了する。つまり、米国AIは負ける
- 中国が調達するリソースに対抗するため、米国も十分なリソースをAI開発に投入する
- 米国政府は積極的にAIを導入し、AI企業を支援する
結局のところ、中国に勝つためとして米国政府にOpenAIへの全面支援を要請している。これは今年初旬、中国のDeepSeekが発表した推論モデル「DeepSeek-R1」の性能が予想よりも高く、加えてコストも安かったことから、このままでは負けると判断したものと推測される。
人権意識の低い中国がAI市場を席巻することは西側諸国にとって脅威となる。OpenAIの提言をそのまま米国政府が受け入れるか定かではないが、十分な検討の上、適切な政策決定につながることが望まれている。