PTCジャパン社長・神谷知信が語る「『2025年の崖』を前に真の〝製造業DX〟を!」

製造業のデジタル化を通じて日本を元気にしていきたい─。

 2023年11月に現職に就く以前、新卒でボッシュに入社して自動車というものづくりの世界を見てきました。その後、デル・テクノロジーズなどを経て、アドビの社長としてサブスクリプションやクラウドへの事業転換を牽引してきました。

 自分自身の歩みを踏まえた上で、いま見定めているのが冒頭の目標です。日本の製造業を見渡すと様々な課題が見えてきます。例えば、自動車で言えば電動化や知能化。国内に目を向ければ品質問題。これらの課題を解決するために必要なのが「製造業DX」なのです。

 恐らく製造現場で働く方々もその認識はあるでしょう。しかし、それは真の製造業DXとは言えません。それまで部品をエクセルの表で管理していたものをデジタル端末で管理できるようにした、というだけでは真の製造業DXではないのです。

 なぜ、海外の自動車メーカーが飛躍的な進歩を遂げることができたのか。リアルとデジタルを結び付け、企画・設計から生産・運用・監視・サービスといった領域までの情報を、あらゆる部門で共有できる環境を整えているからです。だからこそ、変化に迅速に対応できるのです。

 より早く変化に対応できればユーザーエクスペリエンスはより高まり、コンシューマーの期待値にも応えやすくなります。いい商品を素早く作り、その後のサービスでも機敏に対応できれば、その期待値はますます高くなります。完成品を納品し、その後に必要な修理パーツなどを取り寄せるだけでも時間がかかってしまうことは往々にしてあることです。これを防ぐためには、部門の垣根を越えて情報を共有することが重要です。

 しかし、これが実践できていないのが日本の製造業なのです。原因は何か。それは社内であっても自らの所属する部門の中核となる情報をオープンにすることに拒絶反応を持っているからです。恐らく知らず知らずのうちに情報が社外に漏れてしまうことを危惧しているのでしょう。また、現状でも収益が出ているのだから、そのままで良いと現状維持に甘んじている面もあるのではないかと思います。

 ところが、日本の製造業の世界におけるプレゼンスは相対的に低下しています。デジタルという〝武器〟を生産領域全体に導入し、完成品と設計や製造工程におけるIDを紐づけるようにしなければ、更に世界から後れを取ってしまうことになります。それほど海外メーカーはデジタル領域で進化しているのです。

 さらに日本固有の問題もあります。それが「2025年の崖」です。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムやソフトウェアなどが時代遅れのレガシーとなり、経済損失額が最大で年間12兆円にまで増加する可能性があるのです。

 当社は3次元CADの「Creo」や製品コンテンツと業務プロセスを一元管理する製品ライフサイクル管理の「Windchill」といった設計から製造、運用、サービス、廃棄に至るライフサイクルを通じた製造業のデジタルスレッドを構築し、企業の真のDXを支援しています。グローバルで3万5000社を超える企業の製造業DXを支援してきました。

 多くの企業が抱える悩みを解決し、日本の製造業が世界に冠たる地位に返り咲いて欲しい─。私はそう考えています。「2022年経済構造実態調査」によると、日本の製造業には約24万社の企業があります。製造業DXでこれらの1社1社が元気を取り戻すことが重要なのです。

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