【農林水産省】備蓄米運用ルールを変更 市場のゆがみ正常化へ

農林水産省は、不作や災害時に限定して放出していた政府備蓄米の運用方針を改めた。全国農業協同組合連合会(JA全農)などの集荷業者に対し、1年以内に政府が同等・同量の国産米を買い戻すとの条件付きで売り渡すというものだ。昨夏にコメが品薄となり価格が高騰しても、頑なに放出を拒んだ。「新米が出回れば価格は下がる」と見込んでいたからだ。しかし、一向に米価は下がらず、政策の転換を余儀なくされた。

 実際に放出するかどうかなどは今後の状況次第だが、江藤農水相は2月3日の衆院予算委員会で、「いつでも出せるように準備を急がせる」と強調した。

 農水省の誤算の背景にあるのは、集荷競争による在庫の分散だ。農家が収穫したコメは、JA全農などが集荷し、卸業者を通じて小売業者や飲食店に行き渡り、消費者に販売されるケースが一般的だ。

 ところが、最近は価格高騰の影響でマネーゲームの様相を呈し、一部の卸業者などが農家から直接付けるケースが多発。JAが「買い負ける」ことも増えている。農水省は、こうした業者や農家が在庫を積み増すことで流通が停滞していると推測する。

 集荷業者と卸業者の間の相対取引価格は、昨年12月の全銘柄平均で前年同月の1.6倍。昨年9月から4カ月続けて過去最高を更新している。総務省が発表した1月の東京都区部の消費者物価指数でも、コメ類は70.7%上昇し、比較可能な1971年以降で最大の伸びとなった。

 昨夏のコメ騒動を念頭に、消費者に不安をあおるような備蓄米の放出は慎重に検討すべきだとの意見もある。

 一方、野村総合研究所の木内登英氏は自身のレポートで、「足元の価格高騰は先行きの価格上昇を見込んだ一部の流通業者らによる買い占めの影響が大きい」と分析。「備蓄米の放出を通じた政府の市場介入は、市場メカニズムを正常化させる」と指摘する。

 コメに対する世間の関心は高く、政府は引き続き丁寧な情報発信が求められている。

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