ファーストアカウンティング社長・森 啓太郎「経理特化型AI企業として 照合や確認作業までも自動化 『経営部門の復権』を目指す」

「AIでどんな経理業務ができるようになっても経理部門は重要。人を動かすのは人。経理部門はより経営の中枢に位置づけられるべき」

 2023年に東証グロースに上場した経理特化型AI企業として、旭化成やサントリー、第一三共、村田製作所などプライム上場企業を中心に135社が同社のサービスを導入。約7割が上場企業だ。

 通常、経理は営業などから提出された領収書の日付や金額などが正しく請求されているか、あるいは法律や社内規定に則っているかを照合する確認作業に多くの時間を費やしている。

 しかし、同社の会計分野に特化したAIを導入すると、これらを全てAIが〝判断〟する。さらに台紙切取や仕訳などにおける勘定科目の推論やインボイス制度などに関する確認機能も搭載。経理人材は会計システムへの入力といった重荷から解放される。

「(企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す)ROIC(投下資本利益率)や(企業の資産面から株価の状態を判断する)PBR(株価純資産倍率)を意識する経営が求められる。そのため、自社の資金の動きが判る経理部門の役割は今後さらに大きくなる」。しかも、全産業で人手不足が喫緊の経営課題となっているが、中でも経理部門の人手不足は深刻だ。

 AIは翻訳や自動運転など様々な領域で社会実装されつつあるが、「経理に特化した1点突破型の経営」を貫く。背景には前職で食品系のネット通販の社長だった頃の原体験がある。

 月初になると毎月「入金はまだか?」という電話のやり取りがあり、原因は請求書の送付忘れなど些細なことばかり。「せっかく構築した信頼関係が些細なミスで崩れてしまいかねない」という問題意識があったからだ。

 経理は海外の企業でも同じ。今後は生成AIの開発と海外展開に力を入れていく考えだ。

 自身を「歴史マニア」と称するほどの歴史好き。「何が成否を分けたかを学べる」からだ。歴史書を読み漁り、現地にも赴く。

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