建設コストが4年で約2倍! 三菱商事が洋上風力発電で減損損失

「日本のみならず、いろいろな国で通常のインフレ率以上に機材価格が上がっている。カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)社会に向けた事業が進むように、制度設計の変更も踏まえて議論をしている」

 三菱商事社長の中西勝也氏はこう語る。

 三菱商事が第3四半期(2024年4ー12月期)の決算で、国内洋上風力発電事業において522億円の減損損失を計上した。世界的なインフレによる調達・建設コストや人件費の高騰に、円安の長期化や金利上昇などが直撃。一足早く海外では有力企業が洋上風力発電事業から撤退するケースも出ていたが、日本でも同様の問題が顕在化した形だ。

 三菱商事は2021年12月、本格的な洋上風力発電事業では国内初となる事業者公募「第1ラウンド」において、対象となった全3海域を〝総取り〟。再生可能エネルギーベンチャーのレノバなど、他の陣営が「勝負にならなかった」(大手電力幹部)と話すほどの圧倒的な売電価格の安さが功を奏した。

 JERA社長の奥田久栄氏は昨年11月の記者会見で、「風車の価格の推移をみると、この1~2年に4年前の1.5~1.8倍くらいコストが急上昇している」と指摘。それくらいコストが上昇しており、三菱商事が今後事業を進める上では、入札のウリだった〝圧倒的な安さ〟が重くのしかかっている。

 この傾向は世界も同じ。洋上風力発電で最大手のデンマーク・オーステッドは昨年、米国事業で121億デンマーククローネ(約2600億円)の減損を計上。採算悪化によって、欧米では事業の縮小や計画の撤退など、見直しが相次いでいる。

 もっとも、三菱商事は洋上風力事業で減損を計上しながらも、第3四半期の純利益は8274億円(前年同期比18.8%増)と増益を確保。中西氏は「今回の減損を打ち返すことができたのは、既存事業のにじみ出しができ、バランスの取れたポートフォリオを持っているから」と一定の手応えも口にした。

 コスト上昇の問題は、第2、第3ラウンドで落札した他の企業にも同様にのしかかる。足元では逆風だが、日本が洋上風力を再エネの柱と位置付けていることには変わりない。同事業をどう再構築していくのか、中西氏も正念場である。

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