NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は2月21日、大垣共立銀行らと共に、総務省が公募した「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業」において、林業の就業環境改善を目的とする新たな通信技術やコミュニケーションアプリなどを活用したソリューションの実用化に向けて岐阜県揖斐川(いびがわ)町で実証実験を実施したことを発表した。
実証実験の背景
岐阜県の森林率は全国2位の約81%に達するなど、豊かな森林資源を有する。中でも揖斐川町は総土地面積の約91%が森林であり、林業が盛んだという。しかし、林業における作業現場は山間部などのモバイル電波が届かない電波不感地帯である場合も多く、けがや遭難などの事故発生時に外部へ連絡する手段がなく、早期発見や対処が難しい危険な環境にある。
また、機材故障などのトラブル発生時においても通信可能な環境下まで移動が必要となるなど、業務の非効率性も課題とされる。NTT Comはこれらの課題解決に向け、電波不感地帯となっている作業現場のネットワーク化と外部との連絡を可能とするコミュニケーションツールの導入により、就業環境改善の効果を検証した。
実証実験の概要と成果
実証実験は2024年11月18日から12月20日まで、岐阜県揖斐川町において揖斐郡森林組合の協力のもと林業の作業現場で実施。衛星ブロードバンド「Starlink(スターリンク)」やモバイル回線、Wi-Fi HaLowを活用してネットワークエリアを構築し、通信環境の確保に成功したとのことだ。
また、NTTらが提唱するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の構成要素の一つとして研究開発を進めるCradioを活用し、地形データや周囲の無線電波状況をもとに最適なネットワーク端末の配置場所を自動で導出することで、ネットワーク設計と構築を効率化した。
さらに、コミュニケーションツールとしてトランシーバアプリ「BONX WORK」を使用し、音声通話に加えて写真共有を含むテキストチャットによって現場と事務所間での円滑なコミュニケーションが実現できたとのことだ。