住友化学社長に水戸信彰氏 「『勝ち筋』を見極めて集中する」

「ブロックバスター」として期待される農薬を開発

「米国の経済・外交政策が転換する中で不確実な事業環境だが、住友化学を成長軌道に回帰させ、10年後、20年後もグローバルに存在感がある会社としてい続けられるように力を尽くしていく」ーこう話すのは、住友化学次期社長の水戸信彰氏。

 2025年2月3日、住友化学は社長交代を発表した。社長には専務執行役員の水戸氏、社長の岩田圭一氏は代表権のある会長、経団連会長を務める会長の十倉雅和氏は取締役相談役となり、6月の株主総会後に取締役を退任する。

 この人事が具体的に動き出したのは約1年前のこと。取締役会の諮問機関である役員指名委員会で複数の候補者を選定。その中から「激しく変化する経営環境の中、当社の再成長への回帰を確実なものとするため」(岩田氏)、①ビジョン構築・実行、②組織統率、③変革する力、④技術への洞察力、⑤国際性・コミュニケーション力という資質が必要だという観点で議論し、水戸氏が選ばれた。

 水戸氏は1960年8月広島県生まれ。85年名古屋大学大学院農学研究科博士課程修了後、住友化学工業(現住友化学)入社。農薬畑が長く、知的財産部長、企画部長なども務めた。

 ブロックバスター(世界売上高1000億円を超える薬品の通称)として期待がかかる農薬「ラピディシル」の開発に携わった。化合物の性能には自信があったが、社内から様々な声があり、開発は3度中止に。それを粘り強く開発再開を働きかけ、上市まで漕ぎ着けた。

 住友化学では子会社の住友ファーマ、サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコとの合弁・ペトロ・ラービグの業績悪化で24年3月期に3000億円を超える最終赤字に。岩田氏は不採算事業の売却などの構造改革を行い、今期は最終黒字を回復する見通し。強みを持つ半導体関連の「フォトレジスト」や農薬事業が牽引。

 業績は回復基調だが、待ち受けるのは構造改革。水戸氏は「仲間である社員と徹底的に議論をし、納得を得て、最後は私が決断する。強み、『勝ち筋』を見極めて集中していく」として、改革へ向かう住化の潜在力、真価をどう掘り起こしていくか。