【金融庁】三菱UFJの窃盗事件を受け、貸金庫業務の在り方を議論へ

三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から多額の金品を窃盗した事件を受け、金融庁は貸金庫業務のあり方について、金融機関の担当者や有識者らの意見を聞く検討会を近く設ける。

 業務実態を詳細に把握した上で、顧客資産の安全確保に加え、マネーロンダリング(マネロン)など、犯罪防止上の観点からも適切な管理が徹底されるよう金融機関に対する監督体制を強化する方針。当局の締め付けが厳しくなれば、地銀などを中心に縮小・撤退に動きが広がりそうだ。

 金融庁は従来、貸金庫業務に関わるリスクを監督上の重点対象にして来なかった。しかし、三菱UFJ銀の窃盗事件は被害が顧客70人分、約17億円。世論の批判が高まる中、当局としても対応を迫られた形だ。

 金融界では「『パンドラの箱』が開いた」(大手行幹部)との受け止める向きも多い。銀行法は金融機関に付随業務として貸金庫サービスを認めているが、対象は「有価証券、貴金属その他の物品の保管」。現金が明記されていないのは、「預金」として管理するのが筋だから。

 ただし、貸金庫は契約者以外には預けた資産の中身が分からない仕組みで、かねて法曹界関係者からは「資産家らが相続税などを免れるための現金の隠し場所にしている」(法曹界関係者)と指摘されてきた。悪用されているとすれば、マネロンとの関連が大きな問題となる。

 識者は「かつて秘匿性を最大の売り物にしたスイスの大手銀行はマネロン排除の国際的な圧力を受けてビジネスモデルを転換した。邦銀も貸金庫ビジネスのあり方を抜本的に見直さざるを得ないだろう」と指摘するが、先行きは不透明だ。

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