エクイニクスはこのほど、2025年のアジア太平洋地域における技術インフラストラクチャのトレンド予測を4つ発表した。以下、それぞれ見ていこう。
プライベートAIインフラストラクチャを取り入れたハイブリッドAI導入の推進
デジタル企業の間では、特にプライベートデータを扱うAIワークロードに対しては、新たなアプローチが適している場合があると認識され始めている。
具体的には、ユーザーのクエリや関連データをパブリッククラウド上のモデルで処理する従来の「Data To The Model(データをモデルへ)」アプローチに代わり、「Model To The Data(モデルをデータへ)」アプローチを採用している企業が多いという。
後者のアプローチは、AIモデルを組織のプライベートデータストレージに隣接するプライベートコンピューティングインフラストラクチャに展開するもので、多くの場合、モデルのエンドユーザーに近い物理的な場所に配置される。
このアプローチは、プライバシー、速度、コストの観点からメリットをもたらす可能性があるという。
2025年は、ハイブリッドAIインフラストラクチャを導入する企業が増加すると予測されるという。これにより、特定のAIサービスに対するこれらの考慮事項に応じて、プライベートおよびパブリック AI の両方を柔軟に活用できるようになると考えられるとのことだ。
AIと量子技術の進化に伴うサイバーセキュリティの強化
アジア太平洋地域ではサイバー脅威が増加しており、2024年のサイバーセキュリティ支出は360億ドルに達すると予測されている。この急増は、AIやIoT技術を活用したサイバー攻撃の高度化など、さまざまな要因によって引き起こされているという。
量子コンピューティングは、サイバーセキュリティに対する主要な脅威となりうる。なぜなら、量子コンピューティングは現在の公開鍵基盤の重要な部分に深刻なリスクをもたらし、現在の暗号を数分で破ることができると予測されているからだ。
国家レベルの攻撃者は、暗号化された機密データを現在は解読せずに収集し、技術が利用可能になった時に解読しようとしている。これは「harvest now, decrypt later(今収集して後で解読)」攻撃と呼ばれている。
これらの脅威に対抗するため、量子暗号技術と生成AIツールは、組織のサイバーセキュリティ戦略において不可欠な要素となりつつある。
量子技術のサイバーセキュリティフレームワークへの段階的な統合は、高度化する暗号攻撃からデータを保護するために極めて重要だという。量子鍵配送は、これらの高度なサイバー脅威から機密データを守るため、前例のないレベルのセキュリティを提供するとのことだ。
エッジコンピューティングを活用したデータ主権の強化
政府のデータ主権への関心の高まる中、IoT、生成 AI、リアルタイムアプリケーションの普及が進み、端末(エッジ)での強固なITインフラの必要性が増している。
エッジコンピューティングは、データのローカル処理を可能にすることで、転送リスクを軽減し、国ごとに大きく異なるアジア太平洋地域のデータ主権法への準拠を支援するという。
アジア太平洋地域では、国民のデータを保護するために、厳格なデータ主権政策を実施する国が出てきている。例えば、中国のサイバーセキュリティ法は、国内で収集されたデータを国内に保存することを義務付けている。
エッジコンピューティングサービスは、企業や政府がデータを発生源の近くでい処理することを可能にし、応答時間を短縮やデータセキュリティの向上を実現する。このアプローチは、特に厳格なデータ保護法が施行されている地域で、データ主権規制を遵守するために不可欠なものとなるという。
ハイブリッドマルチクラウドでビジネスアプリケーションを進化
アジア太平洋地域は、世界のクラウドデータセンターの37%を占めており、アジア太平洋のパブリッククラウド市場は2026年までに年平均成長率(CAGR)26%で成長すると予測されている。マレーシア、タイ、ベトナムなどの市場で拡大が計画されているという。
一方で、多くの企業が複数のパブリッククラウドサービスのアジリティとプライベートクラウドインフラストラクチャの利点を組み合わせたハイブリッドマルチクラウドアプローチを採用している。
ハイブリッドマルチクラウドは、ITインフラストラクチャを最適化しようとする企業にとって引き続き標準となり、パブリッククラウドとプライベートクラウドの利点をバランスよく活用するという。