大日本印刷株式会社(DNP)は12月23日、国内の各自治体の住民と職員がこれまで以上に安全・安心に行政サービスを利用できる「メタバース役所」の実現に向けて、本人認証機能を開発したことを発表した。
今回、DNPと岐阜県飛騨市は、同市職員を対象とした実証事業を2024年12月24・25日に実施する。
今後は、認証対象を住民にも広げ、これまで通り匿名による自治体相談窓口の機能に加え、電子申請など住民の本人認証が必要なサービスもメタバース空間で提供する。複数回にわたる継続的な相談が必要な場合も、「メタバース役所」と実際の役所窓口を連動したサービスの提供を可能にする。
メタバース役所内で本人認証機能を追加する狙い
DNPは、メタバース役所のアバターを通じた相談などの実証事業を通じて、「電話よりハードルが低く、気軽に相談できた」「名前も顔も出さなくていいため、言いたいことが言える」などの評価を利用者から得てきた。
一方、継続的な相談や課題解決で行政のサービス・制度を利用する際には、本人確認が必要となるため、これまでは「メタバース役所」とリアルな役所窓口を連動した支援までを行うには課題も残った。
また、メタバース役所を利用する住民や自治体職員・運営スタッフともに、メタバース空間でアバターを操作する相手が誰なのかわかりにくく、相談や交流の際になりすましの不安をおぼえるという課題があった。
こうした課題を解決するとともに、住民の相談対応以外の多様な自治体業務をメタバース空間で実施するため、自治体職員・運営スタッフのメタバース空間での行動・操作ログを記録するなど、本人の特定につながる本人認証機能を今回開発したという。
岐阜県飛騨市との実証事業について
DNPと同市は2024年7月に、自治体職員交流会やメタバース移住婚の実証事業を行った。今回両者は、同市職員に限定して本人認証の実証事業を行い、役所で実際に行っている業務を「メタバース役所」内でも実施することを目指す。
住民に対する会話や説明を伴う実際の相談と類似する業務として、職員向け研修を対象に実証を行う。この研修に参加した職員の行動・操作ログの分析やアンケート評価をもとに、本人認証機能の有効性と実用性を検証する。
今後の展開
今回の実証事業の結果を元に、DNPが開発する認証基盤を通じて、メールアドレス、SNS、マイナンバーカードなどによる本人認証機能をメタバース役所のオプションメニューとして2025年度内に追加する。
また、本人認証で得た「メタバース役所」の利用データと、実際の役所の各種行政サービスの利用データを集計・分析して、業務の最適化を図る。メタバース役所のサービスを拡充することで、誰一人取り残されないデジタル社会とより良い未来の実現を目指す。