CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を提供するTealium。今回、米国本社CEO(最高経営責任者)のJeff Lunsford氏と、今年11月に日本法人であるティーリアム・ジャパンのカントリーマネージャーに就任した安部知雄氏がインタビューに応じ、同社プラットフォームの強みや日本におけるビジネスに関する話を紹介する。

リアルタイム性を重要視するTealium

--TealiumにおけるCDPの強みを教えてください。

Lunsford氏(以下、敬称略):当社のCDPに対するアプローチは他社とは異なります。当社のプラットフォームはデータが生成されるところで収集するため、Webサイトやモバイルアプリ、店舗、ATMなどから情報を収集します。

  • CEO(最高経営責任者)のJeff Lunsford氏

    Tealium CEO(最高経営責任者)のJeff Lunsford氏

他社のCDPは、一部のアクティベーション機能を備えた次世代のDWHや自社のソリューションだけに接続できるようなものです。当社はエンドツーエンドのデータサプライチェーンであり、企業向けにリアルタイムのデータファブリックを提供しています。

AdobeやSalesforceなどは自社のマーケティングプロダクトとしか接続できないようになっている一方、Tealiumはほかの業界ソリューションとも接続できます。

  • Tealiumにおけるプラットフォームの変遷

    Tealiumにおけるプラットフォームの変遷

--製品に関する最新のアップデートの状況はいかがでしょうか?

Lunsford:最新のものとしては「Moments iQ」と「Moments API」をローンチしました。Moments iQはゼロパーティデータの取得・活用を可能にします。Tealium iQに統合されており、タグマネージャからMoments iQのタグ追加で設定できます。

たとえば、Web上で金融機関の住宅ローンに関するページを閲覧したい際に、ポップアップもしくは画面組み込みでユーザーに質問を投げかけ、回答後に即座にパーソナライズするとともに、回答で得たコンテキストを使用して別チャネルからの施策も実施できます。

  • 「Moments iQ」の概要

    「Moments iQ」の概要

一方、Moment APIはリアルタイムアクションのための、柔軟かつカスタマイズ可能なデータアクセスサービスです。

  • 「Moments API」の概要

    「Moments API」の概要

これはユーザーがプロンプトを入力すると、当社のファーストパーティデータハブと即座に連携し、関連する独自の静的データに照会します。その後、プロンプトに独自のデータと顧客の全体像情報を追加し、LLM(大規模言語モデル)が応答し、リアルタイムにファーストパーティデータハブが更新され、そのままアクティベーションするというものです。

  • 「Moments API」の利用イメージ

    「Moments API」の利用イメージ

一例として、ある人物が「男性」としか判断できていなくても、どのような仕事や趣味、家族の有無など、全体のプロファイルをAPIで維持することが可能です。

--日本市場におけるビジネスの状況はいかがでしょうか?トレジャーデータなどが国内でも大きな競合となりますが。

Lunsford:APJ(アジア太平洋・日本)はグローバルで3分の1のビジネス規模を誇ります。日本では三菱UFJ銀行さんやソニーマーケティングさんなどが導入しています。

トレージャーデータさんとは技術的にはかなり異なります。先ほども話したように、彼らのプラットフォームは一部にマーケティングアクティベーションを加えている、という認識です。

実際、当社の顧客で利用されている場合もありますが、もう1つのバックエンドのDWHという扱いで同期させて、他のデータソースからも情報を収集できることから、トレジャーデータさんにとってもデータが入るメリットがあります。

安部氏(以下、敬称略):補足すると、トレジャーデータさんやSnowflakeさんの製品を顧客台帳と思っていただくと、膨大なデータを溜め込むことには強みがあります。当社の場合、顧客台帳に書き込んだ情報に加え、顧客が何を欲しているかに対してリアルタイムでアクティベーション可能なことに強みがあります。

  • ティーリアム・ジャパン カントリーマネージャーの安部知雄氏

    ティーリアム・ジャパン カントリーマネージャーの安部知雄氏

企業のAI活用を支援

--企業におけるAIの活用が増加し、最近ではAIエージェントの活用にシフトしています。データガバナンスについてはどのように考えていますか?

Lunsford:もちろん、AIのワークロードにも対応しています。今後は、AIがすべての中心になることが見込まれ、成功するためにはデータを収集しなければなりません。

エージェント的なワークフローをエンタープライズ内で活用していくことを考えると、当社のプラットフォームでは最初の段階で情報がすべて1カ所に揃っています。そのため、分散している情報を組み合わせる必要がないことから、ワークフローの中で有効にデータを活用することができます。

また、データガバナンスはお客さまと要件を確認したうえで、プラットフォームを運用していきます。

たとえば、米国のヘルスケア企業でHIPAA(電子化した医療情報に関するプライバシー保護・セキュリティ確保について定めた米国の法律)に準拠しなければならない際は、米国内のプライベートクラウド上にデータを置いて対応します。

お客さまが定義したルールに従って、データをルーティングできるプラットフォームの仕組みになっています。さらに、人員はプライバシーの法律や各国の規制に関する専門家などが在籍しているため、対応できます。

日本市場に対する期待

--パートナーエコシステムの考え方はいかがでしょうか?また、最後に日本市場に対する期待について教えてください

Lunsford:パートナーは大きくSI、テクノロジー、エージェンシーの3つに大別しています。特にAWS(Amazon Web Service)やGoogle、Facebook、Snapchatなどのハイパースケーラーは、当社がより良いデータを提供することで広告の効果を得られるため、互いにWin-Winの関係と捉えることができます。

安部:日本ではSIにアクセンチュアやTISなど、テクノロジーがAWSジャパン、Facebook Japanなど、エージェンシーが博報堂、電通、トランスコスモスなどがそれぞれパートナーです。

Lunsford:日本市場に対する期待については、既存のお客さまだけを支援するだけではなく、今後1年間で10社程度のお客さまを獲得していきたいと考えており、ビジネスとしても50%以上の成長を期待しています。

安部:日本では、TealiumのデータがAIに活用できるという盛り上がりがあるため、まずはそこに当社のメッセージングをフォーカスしていこうと考えています。

ただ、データを貯めることはできて活用できないということもあるため、Tealiumと併用して利用されるAdobeやSalesforce、Databricks、Snowflakeなどとパートナーシップをしっかり組んでいきます。データの質が高い企業は当社が得意とする領域です。

日本市場には大きな可能性を感じており、当社のプラットフォームで“瞬間を捉える”ことができると理解してもらえればと考えています。

  • Tealiumが実現するリアルタイムデータ基盤

    Tealiumが実現するリアルタイムデータ基盤

瞬間を捉える、ということは生成AI時代において重要になってきていると判断している企業も出てきたため、われわれにとってはチャンスです。