米Googleは12月9日(現地時間)、量子チップ「Willow」を発表した。Willow は、サンタバーバラにある最新鋭の施設で製造された。同施設は、特定の目的のためにゼロから建設された世界でも数少ない施設の一つだという。

同社は、「Willow」による成果として、「閾値以下の量子エラーを指数関数的に削減できること」「最速のスーパーコンピュータであるFrontierが10セプティリオン (10の25乗) 年かかる計算を5分未満で実行したこと」を挙げている。

  • 量子チップ「Willow」の発表を行った、量子ハードウェアのディレクターのジュリアン・ケリー氏

閾値以下の量子エラーを訂正

量子コンピュータの計算単位である量子ビットは、環境と情報を急速に交換する傾向があり、計算を完了するために必要な情報を保護することが困難になるため、エラーが課題だという。そして、使用する量子ビットの数が増えるほど、エラーが発生する。

こうした状況に対し、Willowは使用する量子ビットの数が増えるほど、エラーを減らせるという。

Googleは3x3のエンコードされた量子ビットのグリッドから、5x5のグリッド、7x7のグリッドへとスケールアップし、大きな物理量子ビット配列をテストした。そのたびに、量子エラー訂正に関する技術を用いて、エラー率を半分に削減できたとのことだ。

量子ビットの数を増やしながらエラーを減らせたことは、閾値以下のエラーを訂正できることを意味するという。

最速スパコン「Frontier」を上回るパフォーマンス達成

GoogleはWillowのパフォーマンスを測る指標として、ランダム回路サンプリング (RCS) ベンチマークを利用した。

このベンチマークにおいて、Willowは最速のスーパーコンピュータであるFrontierでも10の25乗、つまり10,000,000,000,000,000,000,000,000年かかる計算を5分未満で実行したという。

  • 量子チップ「Willow」のベンチマークの結果 引用:Google

Willowの開発ロードマップ

量子コンピューティングの次の課題は、今日の量子チップで、実世界のアプリケーションに関連する「古典的ではない有用な」計算を初めて実証することだが、GoogleはWillow 世代のチップがこれに役立つと述べている。

Googleはこれまで2つのタイプの実験を行ってきたという。1つは、古典的コンピュータと比較してパフォーマンスを測定するRCSベンチマークを実行したもの。もう1つは量子システムの科学的に興味深いシミュレーションを実行したものだ。これは、新しい科学的発見につながっているが、古典的コンピュータでもまだ実現可能だという。

Googleはこの2つの実験を同時に行うことを目標としている。これは、古典的コンピュータでは実現できない、実世界の商業的に重要な問題に役立つアルゴリズムの領域に踏み込むことを意味するという。

  • 量子チップ「Willow」の開発ロードマップ 引用:Google