KDDI、沖縄セルラーアグリ&マルシェ、沖縄県島尻郡八重瀬町、沖縄県南部農業改良普及センター、JAおきなわ具志頭支店ピーマン専門部は12月5日、1月に農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録された「ぐしちゃんピーマン」の供給拡大に向け、最適な栽培環境構築を目指してIoTを活用したスマート農業事業の実証を開始したことを発表した。
実証では「ぐしちゃんピーマン」の栽培環境をIoTセンサーにより可視化し、さらに生産者から収集する栽培管理情報や収量情報と合わせてデータを分析する。分析結果をもとに高収量生産者の栽培事例を参考として生産者間で共有し、栽培環境の改善を図り、産地全体の生産拡大につなげることを目指すという。
実証の背景
八重瀬町では農業従事者数が比較的多い。2020年のデータによると、全国の農業就業者数は約136.3万人で全就業者数の約2%に相当するが、一方、八重瀬町では農業就業者数は全就業者数(1万5270人)の約7.7%(1170人)を占めるという。農業が町の基幹産業となっているものの、高齢化や後継者不足により従事者は減少傾向にある。
町の特色である農業を再興するべく、南部農業改良普及センターは八重瀬町と連携して、農業に関心を持つ担い手に多面的な支援を行う「地域農業振興総合指導事業」を推進しており、ピーマンがその対象作物となっている。
八重瀬町で生産されるピーマンの主要品種は平成元年に導入された「ちぐさ」であり、大玉肉厚でみずみずしく光沢があり、リンゴのような甘さとシャキシャキとした食感で、苦みが少なく生で食べてもおいしいと市場から高い評価を得ているそうだ。八重瀬町のピーマンは「ぐしちゃんピーマン」として2024年1月に沖縄県内で2例目、青果物としては初となる農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録されている。
一方で、「ぐしちゃんピーマン」の品種「ちぐさ」は優れた品種特性を持つものの、品質と収量を共に向上させることが難しく、生産者ごとに等階級や生産量に差が生じているとのことだ。
実証について
そこで今回の実証では、IoTセンサー機器「ハウスファーモ」を利用して、ピーマンハウスの環境情報を収集。生産者ごとの栽培管理や収量情報と合わせて分析することで、データに基づく最適な栽培環境の構築を目指す。
また、高収量生産者の栽培事例を参考値として共有し、他生産者の栽培環境の改善を行うことで、産地全体の生産拡大と品質向上、さらには次世代リーダーとなる新たな担い手の確保や育成にもつなげる。
ハウスファーモは、farmoが提供するクラウド型のハウス環境モニタリングシステム。ハウス管理に必要なセンサーを本体に装備し、9つのデータ(気温、湿度、CO2、飽差、照度、地中温、土壌水分、EC、成長点温度)を5分間隔で計測しクラウドに送信する。ハウスファーモは小型で軽量のため、配線が不要で簡単に移動して設置可能。