日本IBMは11月29日、約5年ぶりにメジャーアップデートしたAIデータベース「IBM Db2」の最新版「12.1」に関して、オンラインで記者説明会を同日に開催した。
AIでDb2そのものを革新
IBM Db2は11月14日に一般提供を開始している。日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 Data&AI事業部 事業部長の千田美帆子氏は「最新版はAIによりDb2そのものの革新を図ったほか、運用業務の負荷軽減のためのAIとしてDatabase Assistantを開発し、生産性と安定運用を支援する」と述べた。
IBM Db2は、1983年にメインフレームのデータベース管理システムとして誕生し、90年代に入りプラットフォームを移植。Linux、UNIX、Windowsに対応し、時代に応じながら必要な技術や新しい技術を採用して、現在ではミッションクリティカルなシステム・業務に欠かせないデータベースに進化してきたという。
5年前の2019年に当時の最新版として発表したDb2は、AIを組み込んだデータベース「Powered by AI」と、AIを生み出すためのデータベース「Built for AI」を打ち出していた。
千田氏は「この方針自体を変えたわけではなく、Powered by AIについては、Db2はミッションクリティカルな環境で活用されることが多かったことから、当時はすべてをAIに偏らせるのはリスクがあると判断した。その後、管理者やエンジニアの業務負荷は軽減するばかりか増えていくため、Database Assistantを開発した。一方、Built for AIについてはRAG(検索拡張生成)構成やレイクハウスアーキテクチャを実現する『watsonx.data』を昨年に発表している」と話す。
運用担当者をAIで支援
続いて、日本IBM テクノロジー事業本部 Data&AI事業部 製品統括部長の四元菜つみ氏が最新版の詳細について説明した。まず、同氏は目玉の機能としてオプティマイザでのAI採用を挙げる。
従来からオプティマイザはルールベースやコストベースのものがあるが、この領域に対してAIを活用した。具体的には、データのバラつきや分布といったカーディナリティの推定誤差を最小限に抑えることが可能となり、チューニングを簡素化するとともにパフォーマンスの向上と安定化を実現し、社内テストでは従来比で3倍高速化したという。
また、最新版では200以上の機能を強化し、クラスタリングソフトウェア「Pacemaker」のサポートや列指向テーブルの新機能サポートやパフォーマンスの強化などを行った。なお、今回の新機能開発にはエンジニアの生産性向上とともに、他社との差別化を図るため、11月に一般提供を開始した「watsonx Code Assistant」を活用している。
一方、Database AssistantはDb2の運用担当者をAIで支援。情報検索やDb2技術者の育成、障害対応などの課題に対して質問をAIが回答し、運用監視項目を容易に取得・確認することが可能なほか、トラブルシューティングのシンプル化や性能問題の根本原因、ボトルネックの特定を加速化できるという。自然言語で質問を記入すれば、AIやマニュアルやナレッジ、化導入のDb2の情報をもとに回答を生成する。
同機能は、AI&データ・プラットフォーム「IBM watsonx」のAIエージェント「watson Orchestrate」をベースに開発。北米のマネジードサービスで提供しているDb2から提供を開始し、ソフトウェアのDb2は新製品として2025年後半に提供開始を予定している。
さらに、最新版には新たなライセンスとして「Starter Edition」を追加し、低コストでDb2の利用が可能になっている。
最後に千田氏は今後の展望として「AIの成功にはデータが非常に重要。Db2への投資は継続し、バージョンアップの支援も積極的に行う。IBMのソフトウェアは今後もAIの力を持って進化させていく。また、生成AIを皮切りに構造化データに加え、非構造化データのニーズも高まっていることから、戦略的に投資していく」と述べ、説明を締めくくった。