石破政権下では地方創生、内需関連に注目
相場の波動から見ていくと、今年の日経平均は3月22日に4万1087円で一番天井、7月11日に4万2426円で二番天井を打って、本格的な下落調整局面を迎えています。
昨年1月4日の安値、2万5661円から始まった「資産インフレ相場」の第1ステージが二番天井を打って終わったわけです。1年以上上げた相場の調整局面で、次の上昇相場があるとすれば踊り場、転換点ということになります。
7月11日の二番天井の後、8月5日に3万1156円で一番底、9月9日に3万5247円を付け、その後上昇して直近に4万円台を回復しています。しかし、株価は伸び悩んでいるというのが10月末にかけての相場の状況です。
なぜ、伸び悩んでいたかというと、投資家、株式市場が10月27日の日本の総選挙の結果を懸念していたことと、11月5日の米大統領選は、どちらが勝っても米国社会の分断がさらに深刻になるということで、米国株式市場が荒れる可能性があるからです。
こうしたことから、投資家はどうしても投資を手控えたり、手元の現金比率を高めるという行動を取ります。私が主宰する音声配信サービス「スガシタボイス」の会員さんからも、手持ちの株式を売却して現金比率を高めた方がいいかを相談されました。これは多くの投資家に共通する心理だと思いますし、これは株価が伸び悩む要因になります。
10月27日の結果、自民党の単独過半数割れや、過半数を割れなくても大幅に議員数を減らすといった事態が予想されており、選挙に向かって株価は一進一退の状況でした。自民党、公明党の与党が敗北するようであれば、株価は大きく下落する恐れがあると誰もが予想していましたが、週明けの10月28日は朝方安寄りしたものの、その後株価は反発、何と700円超高と大幅高となりました。
ただ、11月5日の米大統領選の行方も不透明なので、今後一本調子で株価上昇するとは思えません。
前回、8月5日に3万1156円で一番底、9月9日に3万5247円を付けて、当面の二番底が入って株価が戻ったという話をしました。短期波動では、その通りですが、中期的なトレンドでは、この後8月5日の安値に対して、いずれ二番底が入る可能性があります。
11月、12月に10月27日と11月5日の選挙結果を織り込んで二番底をつければ、その後、株価が上がってくるというのが相場の波動です。
そこで、いつもお話している、株価の日柄、時間のサイクルですが、先日の8月5日の安値から3カ月というのが1つの日柄です。それが、ぴったり11月5日です。ですから、この近辺で一つの転換点を迎える可能性があります。
まずは、自公過半数割れした石破政権が新しい内閣、新しい政策をアピールしていけるか。地方創生、内需・消費拡大、国民の生活を守るというメッセージを出すことです。
もう1つは直近、円安が進んで150円を超えてきています。なので、先程の地方創生、内需・消費関連に加え、インバウンド(訪日外国人観光客)を含む円安の恩恵を受けて、業績向上が期待できる銘柄の株高で、年末高に向かうかもしれません。
「生活防衛」のための資産形成
今年1月から「新NISA(少額投資非課税制度)」が始まっていますが、10兆円ほどの資金が毎月、株式市場に入ってきているという話も聞かれます。
日本の個人金融資産は24年3月末時点で2199兆円となっていますが、これが資産インフレの進行によって、2300兆円、2400兆円に向かっていく中で、NISAを通じて日本の一流企業の株式、特に前述した内需関連、円安メリットで業績がいい株を買う動きが、今後も出てくるでしょう。
これらに加えて防衛関連も買われるなど、株式市場にはっきりとしたテーマが出てくることで、政局不安を乗り越えて、株価の上昇が見込まれます。
ただ、地政学リスクは日増しに高まっています。海外で紛争の拡大や、新たな紛争の勃発があると、ニューヨーク株が大きく下げる局面もあり得ます。その時には日本株も連動して急落しますから、日米の株式市場は引き続き波乱の展開が予想されます。ただ、日本の株式市場は34年ぶりのデフレ脱却の波に乗って、中長期の上昇トレンドは続くものと見ています。
新NISA開始以降、相場の急変などを受けて、一部のメディアでは投資に対する懐疑的な見方を発信する向きもあります。
しかし、1つ言えるのは日本を含む世界はインフレに向かっているということです。インフレでは現金の価値が下がりますから、株式や不動産などに投資をしてヘッジをしないと「生活防衛」ができないわけです。
全ての投資家は、これからインフレ経済に向かっていくことを認識して、生活防衛のために資産形成をする必要があり、そのためには新NISAを活用することが有利だというポジティブマインドが増幅されていくでしょう。
物価、資産価値は上がるけれども、現金の価値が下がることで自分の給与や収入は思うように上がらない時代を迎えますから、資産形成をしない人は厳しい局面を迎えます。資産を持てる者と持たざる者の格差がさらに広がることになるでしょう。