スポーツデータバンク代表取締役・石塚大輔 が語る「学校部活動の地域移行で地方創生につながる取り組みを」

地方創生─。石破茂新首相が掲げる日本再生への起爆剤ですが、私はこのエンジンになるものが「スポーツ」だと思っています。スポーツは健康増進につながるのみならず、応援する人々にも元気を与えます。パリ五輪を見ても、日本人選手の活躍する姿を見て元気と勇気をもらった人も多いはずです。

 そんなスポーツの中でも学校の部活動には可能性があります。中学生という最も多感な時期に自らの能力はもちろん、精神力や忍耐力、さらにはチームスポーツも学ぶことができるからです。しかし、この学校部活動が転換期を迎えていることはあまり知られていないのです。

 学校部活動を巡る課題は様々です。まずは顧問になる教員の労働時間の規制です。平日は夜遅くまで働き、土日も潰れてしまうことから徐々に労働時間の上限規制が設けられました。実は2017年にガイドラインが発表されて、平日は1日休みを設ける上に1日の上限は2時間。土日もどちらかを休みにして1日3時間を上限としました。

 しかし、教員の労働以上に最も深刻な課題があります。少子化です。中学生の人数がピーク時より3割減っているのです。しかも地域によっては部活への参加率も半分を切っています。スポーツ庁と文化庁は全国の自治体と実証事業を始めており、学校部活動の地域移行に動き出しました。要は、部活を地域のクラブなどと連携した活動に移管するというものになります。

 当社はこの地域移行に関するコンサルティング業務をしているのですが、具体的には2つの段階で支援しています。

 1点目は、実態調査を、10年後の校区ごとの人口推移などを把握する、その観点から地域の方向性を確立する。2点目は地域の運営主体や管理主体など想定される団体等への支援です。地域移行を推進する上で必要なノウハウや管理ツールなども制度を構築し、円滑に運営ができる体制づくりを支援します。

 今年度は約40の自治体と連携し、地域移行を推進・自治体支援をしています。部活の地域移行には「人材」「財源」「管理」という3つの要素があります。人材には指導者の育成、財源は資金調達、管理は生徒の個人情報や出欠の管理などです。

 この中で重要なことは生徒の選択の自由を確保することです。だからこそ、民間の外部組織とのネットワークが重要になります。地域クラブも様々な種類のスポーツを行っていますから、そういった地域にある資源を有効に活用することが重要です。

 人材については、総合型地域スポーツクラブやフリーランスのスポーツ指導者、スポーツ協会などと連携したり、プロスポーツチームや企業チーム、大学などが関わるケースがあります。

 また、財源確保の観点では当社がお手伝いした沖縄県うるま市の事例が非常に参考になります。同市は企業版ふるさと納税制度を活用し、21年度に1500万円の寄付を受けました。この制度を活用することは、地域クラブの財源確保の1つの手法になると思います。

 最後の管理では学校の体育館などの鍵の受け渡しや予約などに関し、スマートロックの設置や予約管理システムを導入することで、地域クラブも有料で使用することができるようになり、利用者の裾野も広がりました。

 学校の施設はもっと有効活用させることができます。それで市町村は収益を得られます。それを原資に生徒たちが自分の好きなスポーツに身を興じることができる環境をもっと整備することができれば、スポーツで地域の活性化が実現できるはずなのです。

木村治・アダストリア社長「多様なお客様のニーズに応えて 『グローバルワーク』が30周年」