楽天グループが11月13日に発表した2024年7~9月期の連結決算(国際会計基準)は、営業利益が5億円と、前年同期の544億円の赤字から黒字に転じた。営業黒字はモバイル事業に本格参入した2020年4〜6月期以来で5年(17四半期)ぶり。連結EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は922億円の黒字だった。モバイル事業の赤字が縮小し、インターネット事業やフィンテック事業が利益を押し上げた。
売上高にあたる売上収益は前年同期比9%増の5667億円と7~9月期で過去最高となった。13日の決算会見に登壇した楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は「売上成長の40%が楽天モバイルに起因しており、グループ全体の成長のブースターになってきている」と述べた。
楽天モバイルの契約数は800万回線超、通信品質も改善
楽天モバイル単体で見ると、売上収益は30%増の725億円。Non-GAAP営業損益は506億円の赤字、EBITDAは97億円の赤字とそれぞれ前年同期から200億円、241億円改善した。
三木谷社長は、速報値として楽天モバイルの全契約数が812万回線を超えたことを明らかにした。契約数は10月18日に800万を突破したばかりで、2020年4月のサービス開始以降、約4年半での達成となった。
「現在3000万人以上のユーザーを持つ楽天カードだが、800万人を超えるために8年かかった。楽天モバイルはこれの1.7倍のスピードで成長している。投資フェーズから持続的に成長する企業になってきている」と三木谷社長は強調した。
かねてより課題となっていた通信品質の改善に向けた取り組みも進んでいる。23年10月に獲得した電波がつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」を活用し、ビル間の路地といったホワイトスポットの改善を進め、5Gの整備とソフトウェアアップデートにより人混みでもつながりやすい環境の構築にも注力している。
地下鉄での通信品質改善も順調だ。三木谷社長は「東京メトロではすでに全体の40%の路線が20MHzとなっているが、これを2026年3月までに100%にする」と、東京メトロの事例を紹介した。
激化する低価格プラン競争、三木谷社長「死ぬ気で頑張っている」
また、楽天モバイルの契約が楽天グループサービス利用の促進剤になっている。三木谷社長によると、楽天モバイル契約者は非契約者と比較して、楽天市場や楽天トラベル、楽天カードといった各サービスにおける取扱高が高いという。三木谷社長は「楽天モバイル契約者は非契約者よりも2.45個サービスを多く利用している」と説明した。
一方で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの競合3社は低価格帯プランを充実させ、契約数が急拡大する楽天モバイルに対抗している。
ドコモは10月からオンライン手続き専用の低価格帯プラン「ahamo」を見直した。料金は月額2970円で据え置きつつ、利用可能データ量を月30GBと従来から10GB増やし実質値下げに踏み切った。KDDIも低価格ブランド「UQモバイル」で新プランを投入し、ソフトバンクも格安ブランドの「ワイモバイル」と「LINEMO」について一部の料金プランを刷新した
競争環境が厳しくなってきていることに対し、三木谷社長は「全力で、死ぬ気で頑張っている。競合他社もさまざまな施策を打ってきているが、“無料”や“エコシステム”を強みとする我々のプランの優位性はまだまだ高いだろう」と述べた。
みずほが楽天カードに約1650億円出資 「カードの信頼を補完する」
みずほフィナンシャルグループ(FG)は13日、楽天グループ傘下の楽天カードに14.99%出資すると発表した。発行済み株式を譲り受け、約1650億円を出資する。楽天との提携でクレジットカードビジネスを強化する考えだ。出資比率を15%未満に抑えることで、楽天カードは楽天グループの連結子会社にとどまる。
三木谷社長は「みずほとの業務提携は、相互の経済圏の拡大につながる。ユーザーが3000万人を超える楽天カードは非常に強いクレジットカードだ。ただ、法人向けクレジットカードビジネスを展開する上での信頼をそんなに持っていない。みずほとの提携で信頼を補完する考えだ。WinWinの関係を構築していきたい」と業務提携の狙いを語った。
みずほはすでに楽天証券に49%出資している。みずほ証券と楽天証券は24年4月に共同出資会社の運営を始めており、資産運用の相談に応じるサービスを展開している。今回の出資で、両社の提携がクレジットカード分野にも広がることになる。