サントリーは10月28日、同社のペットボトルに関するサステナビリティを説明する説明会を開催した。説明会には、サントリーホールディングス サステナビリティ経営推進本部 部長の平野隆之氏が登壇し、日本のペットボトルリサイクルの現状とサントリーの取り組みを紹介した。
7つのテーマの下、進められているサステナビリティ経営
サントリーは「人と自然と響きあう社会の実現へ」というサステナビリティビジョンのもと、水や農作物など自然の恵みに支えられた食品酒類総合企業として、自然環境を守り育むことと、人々の生活を潤い豊かにすることが共存し、すべての生命が輝ける社会を目指している。
世界が抱えるさまざまな課題に向きあい、持続可能な社会の実現に向けて挑戦を続けるサントリーグループ。同グループは一体となってサステナビリティ経営を推進するため、2019年に「サントリーグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定し7つのテーマを掲げた。
中でも、工場での節水や啓発活動の推進を行う「水」、水平リサイクルの推進を図る「ペットボトル」、GHG排出の削減推進を目指す「GHG(温室効果ガス)」という環境に関する3つのテーマにおいては、2030年目標を掲げ、世の中に先駆けた取り組みを推進している。
「2R+B戦略」とは?
今回の説明会で紹介された「ペットボトル」は、「単一素材(PET)で設計・製造がしやすい」「軽い・割れない・運びやすい・再栓できる」「(業界自主基準により)透明で中身が見える」「ペットボトルだけでの単独回収ができる」といった特徴から、缶や瓶といった容器と同様に、利便性、環境面含めて有用な素材として重宝されている。
サントリーは、このペットボトルについて、2030年までにグローバルで使用するすべてのペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材等100%に切り替え、新たな化石由来原料の使用ゼロの実現を目指すことを発表している。
「目標の達成に向け、サントリーではグループ独自の『2R+B(Reduce・Recycle・Bio)』戦略に取り組んでいます」(平野氏)
2R+B戦略とは、ペットボトル軽量化のパイオニアとして容器の軽量化を推進する「Reduce」、ボトルtoボトルなどの技術で資源として循環させる「Recycle」、脱石油資源を目指し、バイオマス由来樹脂を積極的に活用する「Bio」の3つから成るもの。
「2R+B戦略」の3つの取り組み
では、「Reduce」「Recycle」「Bio」について、具体的にどのような取り組みが実施されているのだろうか。
「Reduce」の取り組み
サントリーはReduceの取り組みとして、ペットボトルの軽量化に取り組んでいる。
持ちやすさと強度(usability)に加えて軽量化を実現したデザインを採用することで、2リットルと550ミリリットルのペットボトルともに重量が半減しているという。
具体的には、2リットルのペットボトルが2000年の段階では57.0グラムだったのに対して、2020年の時点では29.8グラムにまで軽量化されている。550ミリリットルも同様に、2000年の段階では24.0グラムだったのに対して、2020年には11.9グラムにまで軽量化されている。
「Recycle」の取り組み
サントリーは、Recycleの取り組みとして「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進している。
「ボトルtoボトル」水平リサイクルとは、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに再生すること。ペットボトルを資源として何度も循環することができ、新規化石由来原料の使用量削減とCO2排出量の削減に寄与することが可能となる。
「ボトルtoボトル」水平リサイクルでは、「メカニカルリサイクル」を活用する。これは、マテリアルリサイクル(使用済みのペットボトルを粉砕・洗浄などの処理を行い、再びペットボトルの原料とすること)で得られた再生樹脂をさらに高温・減圧下で一定時間の処理を行い、再生材中の不純物を除去し、飲料容器に適した品質のPET樹脂にする方法だ。
この方法は、環境負荷(原料調達からプリフォーム製造までの工程におけるCO2排出量)が最も少ないリサイクル手法であり、サントリーは2011年、国内飲料業界で初めて技術を確立し、その後現在に至るまで「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進している。
「ボトルtoボトル」水平リサイクルを推進することにより、新たな化石由来原料を使わずに何度もペットボトルとして循環可能になり、原料調達からプリフォーム製造までの工程において、新たな化石由来原料を使用する場合と比較して約60%のCO2排出量を削減できるようになる。
これに加えてサントリーでは、より環境負荷の少ない「FtoPダイレクトリサイクル技術」を導入する取り組みや、自治体・企業とボトルtoボトル協定を締結し回収された使用済みペットボトルのリサイクル先を見える化する取り組み、ペットボトルリサイクル啓発プログラムを通じて資源循環の意義と必要な行動を消費者に伝える取り組みなどを実施している。
「Bio」の取り組み
Bioの取り組みでは、ペットボトルの「100%サステナブル化」に向けて、使用済み食用油(廃食油)由来のパラキシレン(バイオパラキシレン)を用いて製造したペットボトルを、一部商品に11月以降順次導入することを発表した。
バイオパラキシレンで製造されたペットボトルは、従来の化石由来原料から製造したペットボトルに比べて大幅なCO2排出量削減に貢献できるもの。
今回のバイオパラキシレンの導入は飲料用ペットボトル約4500万本分(280ミリリットル、285ミリリットルペットボトル)に相当し、今後も拡大に向けて検討を進めていく構え。
ペットボトルの原料であるPET樹脂は、30%が「モノエチレングリコール」、残り70%は「テレフタル酸」(前駆体が「パラキシレン」)で構成されている。
モノエチレングリコールについては、その原料を植物由来素材とし2013年より「サントリー天然水」ブランドのペットボトルに導入開始するなど、かねてよりバイオ化に取り組んできていた。
今回は、より多くの割合を占めるテレフタル酸(パラキシレン)について、使用済み食用油(バイオマス資源)由来とし、実用化することに成功したという。
実現にあたっては、ENEOS・三菱商事などとの連携により、使用済み食用油由来のバイオナフサを調達し最終的にペットボトルとして製造するグローバルなサプライチェーンを構築。今後はステークホルダーとの協力のもと、バイオマス資源由来のペットボトルの量産化に向けたさらなる体制の構築を目指していく方針だという。